【上海発】中国上海市で7月1日から、新しく施行された条例でごみの分別が義務づけられた。中国ではこれまで、分別の習慣がなく、“中国史上最も厳しい措置”ともいわれている。市民が困惑する中、中国のIT企業は人工知能(AI)で分類項目を識別できるサービスなどを開始し、市民の分別行動を支援している。今後、ごみの分別は中国国内の各都市にも広がる見通しで、ITを使った取り組みが進む可能性がある。(上海支局 齋藤秀平)
上海市の分別項目は、資源ごみ(紙、段ボール、プラスチック類、金属、ガラス製品等)と有害ごみ(乾電池、薬品等)、湿ったごみ(生ごみ)、乾燥ごみ(生ごみ以外の燃やせるごみ)の4種類。決められた時間にごみを排出する必要があり、規定に違反した場合、個人には最高200元(約3000円)、企業には最高5万元(約78万円)の罰金が科せられる。条例は観光客にも適用される。
新たに条例ができたことで、今まで分別をしていなかった市民の間では混乱が広がった。「ブタが食べられるものは湿ったごみ。食べられないものは乾燥ごみ。売ったお金でブタが買えるものは資源ごみ。食べたブタが死ぬものは有害ごみ」と独自の指南が流れた。しかし、分別について市民が理解しているとはいえない状況だ。指定の収集場所では、専門の監視員が目を光らせ、ごみ袋を開けさせて分別状況をチェック。ごみが混在していることが発覚すると、その場で再分別させる動きもある。
ITの社会実装に積極的な中国では、大手IT企業を中心に新たなサービスを展開している。中国の阿里巴巴集団(アリババグループ)は、条例が施行される前の6月28日、モバイル決済サービス「支付宝」(アリペイ)やECアプリ「陶宝網」などで、AIによる画像認識で分別項目を判断するサービスの提供を始めた。
サービスでは、アプリ上でごみをスキャンすると、分別項目が表示される。見つからない場合は、ごみの名前を入力して検索することも可能。さらに、分別ごみ回収代行業者と提携しており、利用者はアプリ上で回収を依頼することもできる。現在、4000種類以上のごみをカバーしており、利用者数は200万人以上という。
一方、華為技術(ファーウェイ)は7月1日から、音声のやりとりで細かく分別を指導するAIアシスタントサービスをリリース。2017年に設立した小黄犬(広東省東莞市)は、IoT技術を活用したスマートごみ箱の事業を展開している。このほか、四川省や江蘇省、山東省でも、ごみに焦点を当てた取り組みが始まっており、ごみの分別がほかの都市でも始まれば、IT企業の競争は激しくなりそうだ。