「離婚されたら困る」という本音
男性と妻は、娘が産まれてからずっとセックスレスが続いています。
男性は、妻の不倫の原因はそのせいだと思っており、「俺が相手をしてやれれば良かったんですけど、疲れて寝たい日が多くてちゃんと話せなかったことを後悔している」そうです。
ですが、「妻が自分以外の男に抱かれているかもしれない」事実は、自分の対応のまずさを理由に本当に受け入れられるものでしょうか。
「奥さんに不倫について問いたださないの?」
と訊いてみると、
「そんなことして、もし離婚話になったら大変じゃないですか。
今のままで大丈夫です」
と男性は頭を振りました。
「離婚すれば親権は俺になるだろうけど、俺ひとりで娘を育てるのって無理ですよ。仕事もあるし。
家もローンを組んで買ったものだし、離婚になったら手続きとかいろいろ面倒くさいじゃないですか。
それに、『嫁に不倫されて離婚』なんて周りに知られたら最悪だし、職場でも変な目で見られるし……。
妻は、家庭のことはしっかりやってくれるんです。
だからいいんです」
これが男性の本音です。
妻の不倫を放置するのは、離婚したくないから。
「セックスレスから妻が浮気して離婚された自分」なんてみっともないし、娘をひとりで育てていく自信もない。離婚にまつわる手続きも面倒くさいだけ。
だったら、今のまま、家庭を優先してくれる妻でいい。
「離婚されたら困る」のが男性の現実であって、「妻の不倫」はそれより一大事にはならないのです。
愛情を置き去りにする夫婦関係
男性は冷静に、でもかたくなに「今のままでいいんです」を繰り返していました。
自分以外の男性に抱かれているかもしれないけれど、家のことを忘れないなら妻を許す。
それは、「その男より俺や家庭が妻にとって大切な存在」というプライドを保てるのかもしれませんが、同時に忘れているのは夫婦ふたりの愛情です。
「愛する妻がほかの男と寝ているかもしれない」痛みを、男性はどう処理するのでしょうか。
離婚したくないからといって、その事実に苦しまないといえば嘘になります。実際に、男性には妻の電話を盗み聞きして以来、「触れるのが嫌になった」「妻の作った料理が美味しいと思わなくなった」など、ネガティブな“変化”が起こっています。
妻のほうはどうなのかわかりませんが、本来お互いに向けるはずの愛情から目をそらし、歪んだつながりで夫婦関係を続けていても、それが本当に「今のままでいい」ことになるのかは疑問です。
愛情を置き去りにした夫婦関係がこの先どうなるのか、見ているものが違うふたりがどう家庭を維持していくのか、男性はこれから現実と向き合わなければいけません。
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妻が不倫をしているかもしれないと思えば、まずその事実を確認し、今後をどうするか話し合うのが夫婦として選ぶ道ではないかと筆者は考えます。
このまま心が離れていく一方のつながりでは、仮面夫婦になるのも時間の問題。そうなれば、関係の修復は今よりもっと難しいものになるでしょう。
妻の不倫を放置できるその思惑には、あとで必ず答えが返ってくることを、男性は忘れてはいけません。