イラスト:上田 耀子

子どもが小学生になり、そろそろパートでもいいから妻に働いてほしいと思う夫。

俺はずっと家族のために頑張ってきたんだし、短時間の労働なら妻の負担にもならないだろう。

そう思ったのに、いざ切り出してみると妻は猛反発。

初めて知った妻の気持ちや、世間から見た自分に悩む夫について、お話しします。

妻に家事や育児を押し付けてきた夫

ある男性(37歳)は、サラリーマンをしながら妻とふたりの子どもと生活しています。

仕事は営業で忙しく、ふたり目が産まれてからは「俺がもっと稼がないと」と残業も嫌がらずに働いていました。

その一方で、家事や育児などはほとんど妻に丸投げしていました。帰宅するとすでに子どもたちは寝ている日が多く、ゆっくり話せるのは週末だけ。妻が「少しは家のこともやってほしい」と言ってきても、「俺はお前たちのために仕事しているんだ」と”突っぱねるしかなかった“のが夫の言い訳です。

そんな状態で何年も過ごしてきましたが、子どもたちが無事に小学生になり、家庭も落ち着いてきたといいます。

妻が日中はひとりで過ごすことが多くなり、ゆっくりしている姿を見ると、ふと思いついたのが妻の就労です。

「時間もできたんだし、パートでもして家計を助けてもらいたい」。夫は、こう思う自分に何の疑問も感じませんでした。

ですが、ある日妻に「そろそろ働かないか」と持ちかけたとき、思いがけない“反撃”をくらったといいます。

「私は家庭の奴隷じゃない」

「今までずっと、私ひとりで家のことも子どもたちのこともやってきた。

あなたは仕事をするだけで、保育園の参観日すら来てくれなかったじゃない。

生活費を稼いでくれるのはありがたいけど、私がどれだけ大変だったか、わかる? やっと少しは休めると思ったら今度は働けなんて、よく言えるよね」

妻は怒りを隠すことなく夫にこう言ったそうです。

「覚えてないだろうけど、私がインフルエンザになったとき、あなたは『何とかしろよ』としか言わなかったよね。だから私は子どもたちを連れて実家に帰った。

あなたが頼れないから、私は実家の親に頭を下げて何度も助けてもらった。

子どもたちが小学生になって時間ができたら、今度は私が実家を助ける約束なの」

と、これからは自営業をしている実家に無給で手伝いに行くことを打ち明けられました。

「そんなこと聞いてないぞ」と夫も思わず声を荒らげますが、

「私は家庭の奴隷じゃないから」

と憎々しげに強い視線を投げる妻の迫力に押され、それ以上は何も言えませんでした。

思い返してみれば、確かに妻が病気になったときも自分は構わず出勤していて、「家事ができないので子どもたちと実家に帰ります」という妻からのLINEも「わかった」の返事だけ。保育園の参観日は妻の両親も行ってくれたことは聞いていたけど、「そうか」だけ。

そのときは、そんな自分にまったく違和感はなく、「俺は家族のために仕事をしているんだから」と納得していました。

ですが、こうして妻の怒りを目の当たりにして、夫は初めて自分のしてきたことが「間違っていたんじゃないか」と気が付き始めます。