今期の日曜9時枠は、TBS系が中居正広主演の『ATARU』、フジ系がオダギリジョー主演の『家族のうた』。そのままでもなかなか興味深い対決だが、今回は別の意味でも注目が集まっていた。それは放送前、『家族のうた』に盗作騒動があったからだ。
ふたを開けてみると、この2作品の初回視聴率は、『ATARU』が19.9%で、『家族のうた』が6.1%(ビデオリサーチ社調べ・関東地区)。なんと3倍以上の差をつけて『ATARU』の圧勝だった。正直、ここまで差がつくとは思わなかったが、これまでの日曜9時対決の結果を考えると、今後の推移がどうなるかも気になるところ。ということで、改めてこの2作品を見比べる上での注目ポイントを整理しておこう。
まず、盗作騒動の経緯から。今年2月、脚本家の伴一彦氏が、Twitterで『家族のうた』の内容が自身の作品『パパはニュースキャスター』に似すぎている点を指摘したところから騒動は始まった。その頃はまだ作品の概要が発表された程度の時期だったが、そこに書かれていた『家族のうた』のあらすじが、あまりにも『パパはニュースキャスター』に似ていたからだ。
『パパはニュースキャスター』は、1987年1~3月期にTBS系で放送されたドラマで、主演は田村正和。独身主義のニュースキャスターのもとに、突然3人の娘が現れ、いきなりパパになってしまうというホームコメディだった。主人公の鏡竜太郎(田村正和)には、酒を飲むと記憶を無くすというクセがあり、3人の娘はすべて12年前に酒の席で口説いた別々の女性の子供。その3人の娘、西尾さん(西尾麻里、現在は西尾まり)、鈴木さん(鈴木恵美子、現在は鈴木恵美)、大塚さん(大塚ちか子、現在は大塚ちか)といえば、今でもドラマファンにはお馴染みの名前だ。この作品は大人気となり、連ドラ終了後も1994年まで3本のスペシャルが製作された。
一方、『家族のうた』の当初のあらすじも、落ち目のロックミュージシャンである主人公は酒に弱く、酔うと見境なしに女性を口説いてしまうキャラクターで、その主人公のもとに中学1年の3人の娘が突然現れるという設定だった。つまり、主人公の職業をニュースキャスターからロックミュージシャンに変えただけで、あとは同じではないのかと指摘されたのだ。
この問題は、『パパはニュースキャスター』の当時のプロデューサー・八木康夫氏(現在はTBSテレビの取締役)を介してフジテレビの担当者と話し合いが持たれ、フジテレビの社長が定例会見の中で「過去の作品と似ているという指摘を受け、話し合いをした結果、よりオリジナル性を出すために、一部設定をアレンジする」と発表するまでに至った。フジテレビの社長自らが言及したことで、伴一彦氏も八木康夫氏も納得したようで、とりあえずこの件は収まった。