『OPEN THE WORLD』(ハートキャッチプリキュア!)
歌:花咲つぼみ・キュアブロッサム(水樹奈々)/作曲:高取ヒデアキ/作詞:青木久美子/編曲:籠島裕昌
ある時は歌手として、また、ある時は作曲家として、様々な特撮、アニメ作品で、沢山の名曲を残している高取ヒデアキさん。
できれば、色々な楽曲を紹介したいので、各作品から一曲ずつ……という縛りを設けて選曲を行っていたのですが、どうしてもこの曲には触れておかなければという使命感に駆られたので、続けて『ハートキャッチプリキュア!』からもう一曲紹介されていただきます。
この『OPEN THE WORLD』は、『ハートキャッチプリキュア!』の主人公である花咲つぼみ(キュアブロッサム)のキャラクターソング。歌うは、つぼみを演じた声優界の歌姫・水樹奈々さんということで、言わずもがなの完成度を誇るキャラソンです。
この曲では、水樹さんの高い歌唱力を活かすためか、ストリングスの音を多用した構成が取られています。高取さんの代名詞といえば、漢らしいホーン・セクションの音……というパブリックイメージがありますが、この曲のように、女性的で優しく、エレガントなメロディも書けてしまう辺りに、高取さんの作曲家としての強みを感じます。
その主題歌だけでなく、キャラクターソングにも名曲、良曲が数多く存在しているのがプリキュア・ミュージックの奥深いところ。ブロッサムの優しさに満ちたキャラクターを歌声で表現してみせる水樹さんの見事な歌唱と共に、高取サウンドの多様性にもご注目ください。
『ミッドナイト デカレンジャー』(特捜戦隊デカレンジャー)
歌:ささきいさお/作曲:高取ヒデアキ/作詞:藤林聖子/編曲:亀山耕一郎
東映の特撮ヒーロードラマやプリキュアシリーズ、いわゆる"ニチアサ"作品へ精力的に楽曲を提供し、ヒーローたちの活躍を力強くバックアップし続けている高取ヒデアキさん。
そうした楽曲の持ち味の一つとして、バラエティー豊かな音楽ジャンルを取り込む自由さが挙げられます。
高取さんのフリーダムな音楽的雑食性がストレートに反映された一曲ということで、次に紹介したいのが、『特捜戦隊デカレンジャー』エンディング曲の『ミッドナイト デカレンジャー』です。
この曲は、特撮ヒーロー作品の主題歌としては珍しいロカビリー調の楽曲。ヴォーカルには、かつて"和製プレスリー"と称され、ロカビリー歌手として活躍していた経験を持つアニソン界の大御所・ささきいさおさんを招いた豪華な楽曲となっています。
ささきいさおさんの"いい声"による渋い歌声に、ウッドベースの響きが絡む、何ともアダルティーなナンバー。
特撮ヒーローとロカビリーという組み合わせのおもしろさ! 観る者、聴く者の予想を裏切る意外性のある音作りも高取サウンドの聴きどころなのです。
『ワンダフル↑パワフル↑ミュージック!!』(スイートプリキュア♪)
歌:池田彩/作曲:高取ヒデアキ/作詞:六ツ見純代/編曲:籠島裕昌
こちらも高取さんが手掛けたニチアサ楽曲の中でも、『ミッドナイト デカレンジャー』と同じく、そのサウンドの意外性が心をウキウキさせてくれる一曲。
先ほど、ご紹介させていただいた『Alright! ハートキャッチプリキュア!』と同じく、ヴォーカルに池田彩さん、編曲にはZ旗や特撮ソング製作ユニット「Project.R」でも高取さんと活動を共にする籠島裕昌さんという"鉄板"の組み合わせによって生み出されたプリキュアソングです。
『スイートプリキュア♪』は、音楽を物語の主軸に据え、主人公たちの友情や親子の絆といったヒューマニズムに溢れたストーリーが紡がれた作品。そのテーマの通り、音楽面でも非常に力が入った作品です。
そのエンディング曲で、高取さんが作り出したのは、何とモータウン的なR&B、ソウルナンバー!
バックでは、女性のコーラスが音に厚みを加え、金管楽器の音がスイートなメロディに力強さを加える。プリキュア主題歌らしい、親しみやすいポップさを注入し、"アニソン"としてのバランスを絶妙に取りつつも、本気も本気なR&B、ソウルのエッセンスが、この曲に特別な個性を与えています。
エンディングアニメーションでは、跳ねるベースとジャイブする鍵盤のバックに描かれた、巨大な金管楽器のCGに度肝を抜かれたファンも多いことかと思います。
高取さんの音楽的バリエーションの豊富さと、ホーン・セクションを印象的に用いる技術が、非常におもしろい形で表現された一曲であり、歴代のエンディング曲の中でも、特別な輝きを放ち続けるナンバーです。
間奏の鳴きまくるサックスの音も最高ですので、ぜひともCDを購入してフルサイズで聴いていただければと思います!
『Transformers ~鋼鉄の勇気~』(超ロボット生命体トランスフォーマー マイクロン伝説)
歌・作曲・作詞:高取ヒデアキ/編曲 - 籠島裕昌
今では、ニチアサの顔となった高取ヒデアキさんですが、それ以前の活動としてアニメファンの記憶に刻み込まれているのが、子どもたちをメインの視聴者層とする、所謂"キッズアニメ"における一連の主題歌ではないでしょうか?
そこで生まれたエヴァーグリーンな名曲たちの中から、まずは『Transformers ~鋼鉄の勇気~』をご紹介させていただきます。
この曲は、2002年から2003年にかけてテレビ東京系列で放映された『超ロボット生命体トランスフォーマー マイクロン伝説』で、後期オープニング曲として使用されていた主題歌です。
高取さんは、この曲において作詞・作曲、そして、シンガーとしても、その才能を思う存分に発揮。現在の生バンドを使ったゴージャスな音作りと違い、当時のアニメソングの主流である打ち込み中心のサウンドではありますが、ハードなシンセサイザーの音と、熱量の籠もった高取さんの"燃える"歌声が聴く者のボルテージを問答無用で急上昇させてくれる熱い名曲です。
また、トランスフォーマー戦士たちの闘いを描くリリックも素晴らしく、これが高揚感のあるメロディや高取さんの歌声とガッチリとマッチ。作詞家としての高取さんの高い技術も感じさせてくれます。
この『Transformers ~鋼鉄の勇気~』も収録されているベスト盤のライナーノーツによると、この曲のレコーディング中に高取さんは感情が昂ぶり過ぎて、少し涙ぐんでしまったそうです……。
そんな情感的なエピソードも納得のエモーショナルでグレートなアニソンです!