8月5日、NECパーソナルコンピュータは1979年にコンシューマ向け本格PCの「PC-8001」が登場してから40周年を迎える記念記者会見を開催した。ビデオレターによる祝辞の中で、日本マイクロソフトでコンシューマPCビジネスを統括するコンシューマ&デバイス事業本部の檜山太郎執行役員常務の言葉も紹介された。インタビューの最終回は、少し長期的な視点からPCは今後、どのように変わっていくのか、また40年のPCの歴史の中で今、何が起きているのかを聞いた。
取材/細田 立圭志 大蔵大輔、文/細田 立圭志、写真/松嶋優子
クラウドとインテリジェントエッジ
ノートPCは、2020年以降にキーボード入力だけではなく音声認識による入力が広がっていくでしょう。少し先だと、必ずしもノートPCの形に縛られず、コンピューティングとしてさまざまな形に変化していくのではないでしょうか。
データを保存する場所もHDDからSSDに変わっただけでなく、もっとクラウドに置かれるようになるでしょう。コンピューティングを使うユーザーは、もはや表示するためのデバイスと操作するためのデバイスがあれば何でもできるようになる世界です。
昔のコンピューティングは、メインフレームという別のところにありました。会社で使っている端末はダムターミナルと呼ばれて、中身でデータ処理などをする機能は何もなくワイヤのケーブルでつながっているだけでした。いわゆる集中処理です。
しかし、これだとワイヤのスピードの違いによって端末が制約を受けてしまうので、次々とダウンサイジングが起きました。そして、PCに多くの機能を搭載するようになったのです。それまでのメインフレームによる集中処理ではなく、80年代からは、ずっとこうした分散処理の動きが主流でした。
しかし、今、クラウドが出てきたことで、再び流れが分散処理から集中処理に移行しようとしているのです。コンピューティングでは、こうした大きなうねりが起きています。ですから、20年以降は分散処理から集中処理の動きがさらに加速すると思います。
ただ、今起きていることは単に過去のメインフレームの時代に戻るだけではなく、集中処理に戻りながらも同時並行で分散処理も進めるという、これまでになかった動きが出ているのです。
それがエッジコンピューティングといわれる世界です。インテリジェントのあるクラウドと、インテリジェントのあるエッジが平行して進化しているのです。
米マイクロソフトのサティア・ナデラ(CEO)がずっと提唱してきました。最初は、クラウドファースト、モバイルファーストと呼んでいましたが、考え方や理念は同じものです。
個人が持つ操作端末や表示端末は、インテリジェントのエッジであると同時に、インテリジェントのクラウドとも連携しているのです。これが突き進んでいくと、ほとんどデータはクラウドに上がっていながら、どこからでもアクセスできるようになります。
私自身、会社でPCを使っていますが、電車の中でスマートフォン、家で自分のPCからアクセスするといったように、特定のデバイスに頼ることはありません。そうした世界が今後、ますます広がっていくと思います。
eスポーツで盛り上がっているゲーミングもロジックは同じです。昔はゲーム機器が家にあって、友達はその人の家にあがって、同じテレビ画面を見ながらゲームで遊んでいたけど、今では「じゃぁ、夜8時にね」とお互いに時間だけ決めれば、場所に縛られることなくいろんなところからアクセスして楽しめます。
人々は、いつでもどこからでもコンピューティングのコアにアクセスしながら暮らしていくようになると思います。(おわり)