立て続けに放たれるのは『ふれて未来を』。ここに集まっているのはツアーファイナルを心待ちにしていた熱心なファンばかり。当然Bメロの倍速手拍子もばっちりキマる。さらに最新アルバムから『アイスクリーム シンドローム』『センチメンタル ホームタウン』と、これからの季節にぴったりな2曲が続く。<ブルースカイ どの街にも/この空はつながっている>と歌いながら、大橋が天井の向こうに広がる大空を指差す。2曲ともよく聴けばかなり複雑なアンサンブルを必要とする楽曲なのだが、テクニカルな印象は薄く、どこまでも突き抜ける開放的なサウンドがグングンと会場を満たしていく。続く『キミドリ色の世界』では、CDより荒々しさを増した演奏と大橋のボーカルが、みるみる観客の熱を上げていく。

「スキマスイッチです!」「どうも~」大橋の挨拶にゆるく相槌を打つ常田。相変わらずのコンビネーションに観客の顔も思わずほころぶ。「最新作の曲はもちろん、昔の曲もこのライブだけのアレンジを用意してきたので、最後まで楽しんでください」というMCに続いて、いったん着席。アコースティック・アレンジで演奏された『太陽』『雨待ち風』『願い言』、これがすごかった。まず選曲が濃い。(確認したところ、他の会場では『ボクノート』や『きみがいいなら』などもやっていたらしい。いずれにしろ濃い)。楽曲のコアな部分をむき出しにするリアレンジの妙に心を奪われながら、この3曲を聴きながら段々と気付いてきたのだが、大橋卓弥の歌声がちょっと、とんでもないことになっているのだ。なんだろう。安易に“歌唱力”とかいう言葉ではまとめたくない。ただ力強いだけでなく、ただ優しいだけでもない。曲の表情に1ミリの狂いもなく忠実、というわけでもない。うまく言えないが、とにかくこれまでとは明らかに違う次元にいっている声なのだ。

なんか今日のライブ、ヤバイことになっちゃう気がする……そんなことを思いながら、聴き慣れないイントロが耳に飛び込む。こちらも大胆にリアレンジされた『螺旋』だ。曰く「都会的なアーバンな感じ」(大橋)というアレンジも無論、このライブのために用意されたもの。そもそも言わずもがなの名曲、よりタイトになった印象のサウンドで観客の腰をグイグイ揺らしていく。この時点ですでに相当の満足感だ。しかしまだライブは序盤なのである。