『自分なんていなくていいじゃん』と思うときもある

© 前康輔/ぴあ

――“俳優としての素”、というのが面白いですよね。その絶妙なバランスが、この写真集の「まだ見たことがない田中圭」という印象につながっているんだと思います。

「僕自身も、写っているのは僕ってわかっているんですけど、『お前誰だよ』って思います(笑)。そうなったのは、よかったなって」

――自分で自分の表情に驚いたカットはありますか?

「いや、ほとんどそうですよ。こんな顔するんだ、って。撮影のときのことを覚えてないわけじゃないんですけど、なにを考えて撮られてたんだろう?と。なんていうか、撮られているときはそうは思っていなかったけど、“俺であって俺でない感覚”というのが、改めて思うとあったのかなって。

そういう写真をチョイスしてひとつに紡いでくれたみなさんがいるから、こういう本に出来上がって。逆にそうじゃない写真を集めたら、もちろん違う作品になっただろうし。そういう意味では、お仕事させていただいてよかったな、って思える方たちと、作らさせていただいた一冊です」

――そういう重厚な世界観に浸ったあとで、巻末のオフショットの笑顔を見ると、そのギャップに萌えてしまいますね。

「……まあ、オフショットに関しては、知らないすけどね(笑)」

撮影:tama

――巻末のインタビューで、いまのご自身について「迷い」という言葉を使われていたのが印象的でした。田中さんは現在31歳。自分にできることとできないことが、だんだんわかってきて、結婚や転職など人生の転機を迎える人も多い時期ですよね。そんな中で、いま田中さんはどのようにご自身の仕事に向き合っているのでしょうか。

「……まあ、自分にしかできないことがあると信じているだけ、ですかね」

――自分にしかできないこと、ですか。

「お芝居で、っていう話ですけどね。表現の仕方だったり、そこで生まれてくる感情だったり。

17年間ずっとお芝居をやらせていただいていて、やっぱりいい意味で貪欲にはなっているし、自信もついてきているし。じゃあ、かと言って『自信があるの?』と言われると、そんなにないし、『そんなに意欲あるの?』と言われると、それもそんなにないし。すごく難しいところで。

でも、なんて言うんですかね、自分がこの仕事をやらせていただいている意味というものを、たまにふと思わないと、『やーめた』ってなっちゃうから。『自分なんていなくていいじゃん』と思うときも多々あるし。でも、『じゃあどこいくの?』って言われても行くところはないし、しがみつくしかないので。

でも、やっぱり、『俺、お芝居が好きだな』っていう瞬間がたびたび現場で訪れるので、それに救われている感じですかね」

――お芝居が好きだという思いは、昔から変わらないものですか?

「そうですね。自分で『俺、芝居好きだなあ!』なんて思ったりはしないんですけど。どっちかというと台詞は覚えたくないし、朝は早く起きたくないし、毎日遊んで暮らしたいと思ってるんですけど、実はそうでもないなって」