――福田さんの作品というと、無茶ぶりが多いように思いますが。
平野:「ここはこうしたら面白いからやってみて下さい」とか、思いつきでやったことを「今の面白かったから、本番でも」というふうに仰って、どんどんセリフを変えていくんです。
だから、いつ何時でも対応できるような心構えはしているんですけど、『エドウィン・ドルードの謎』は台本と福田さんのテイストが合い過ぎていて、何を要求されるか分からないんです。
でも、福田さんは無茶なことはさせるけど、その役者にとってマイナスになることはさせないので、そこを信頼して挑むというか…。
壮:それはすごく感じました。だから、福田色に染まり切ろうと思いましたね。
壮さんにとっては「自然」 平野さんには「俺得」な2人の共演
――壮さんは宝塚を退団して、最初の舞台が男役というのはどういう感じなんですか?
壮:宝塚時代に立ち戻ろうとは1ミリも思っていませんが、退団したからこその色が出ればいいかなと思っています。今回は歌も宝塚の男役より音程が高くて、セリフもそれに合わせた高さにしています。
――周りに本当の男性の役者さんもいらっしゃいますしね。
壮:そうなんですよ。
――何か差をつけようと意識していますか?
壮:いえ、それは全然ないです。男性とは声も違うし、もともと差があるので。でも、横に綾ちゃんがいるのは私にとって自然なんです。可憐でステキな娘役さんがいるみたいで。
――平野さんは壮さんが恋人役というのはいかがですか?
平野:退団されてから初の相手役ということで、すごくプレッシャーがあったんです。娘役の方みたいな所作もまだまだうまくできませんし。今まではアグレッシブな役が多くて、男性の役者さんに手を添えられることもあまりありませんでした。
でも、学生時代から宝塚が大好きで。だから「壮さんが手を引いてくださる」と至福の時を味わってるんです。アニメ的に言うと「俺得」な感じで(笑)。毎回、ファンの方「ごめんなさい、ありがとうございます」と思いながらやってます。
――じゃあ壮さんの舞台もご覧になっていたんですか?
平野:はい、映像でですが。それとお会いする前に、さらにいろんな映像をチェックして…
壮:えーっ!
平野:初めて歌を合わせる時に歌い方を知っておかなきゃと思って。
壮:私の方がもうヘロヘロで、いつも綾ちゃんに引っ張ってもらってるんです。