今夜おとずれた千円でベロベーロになれるせんべろ酒場、
池袋「三兵酒店」を教えてくれたのはYちゃんだった。
Yちゃんは超美人だが美人だということを周囲が忘れるほどビールを飲む。
麦汁に潜水する勢いで飲む。
三兵は昔ながらの酒屋の角打ちだが、彼女と同じくビール党の私が
三兵を愛してやまないのは、瓶ビール大が410円で飲めることだ。
三坪あるかないかの店内には、元漫画家だったと評判のマスターが
イラストタッチで書いた缶詰や簡単なつまみのメニューの数々が
いっぱい貼られている。見るだけでわくわくする。
Yちゃんと通った時代は、女子率はほぼ皆無。
たまに一人酒をしようものなら、ブクロを根城にする異国の商売女かと誤解され、
よっぱらったオッチャンたちに「国はどこだ」と聞かれるのも
大迷惑かつおもしろかった。
ひさしぶりに訪れた三兵は、がらりと雰囲気が変わっていた。
見事にオールスーツ。乗り継ぎの合間にここで一杯飲んで、
郊外に帰ってくサラリーマンが多いらしい。
仕事仲間の後輩男子といいペースで瓶ビール大を空ける。
つまみは200円のもつ煮やゴーヤチャンプル、カブ味噌だ。
箸ではなく串でちまちま食べるので、なかなか持ちが良い。
なかでもカブのボリュームとフレッシュな歯ごたえがうれしい。
ふと、客の一人が「ゴーヤチャンプルならこれ」と島とうがらしを寄越す。
かまわれてなんぼの店なのは相変わらずのようだ。
今夜はほぼ日参している常連ばかり。
ふと、さっきから「けんか寿司」がどうのと威勢よくしゃべりたおしている、
日に焼けたオッチャンが「やあどうも」とビールグラスをあげてくるので、
振り向き様にこちらもグラスを「どうも」と上げる。