ソウルでもっとも絵になる酒場のひとつ『味カルメギサル専門』。店の入口に向かって左手の道沿いにもテーブルが並ぶが、冬場はここに半透明のビニールカーテンがかかる

大らかにお酒を楽しむ韓国。その首都ソウルは、“酒都”と呼びたくなるくらい飲み屋さんが多く、業態も多彩だ。

今回は前回に続き、韓国酒場取材歴20年の筆者が選ぶ『ソウル居酒屋ベスト10』の後編(5位から1位)をお送りする。

選考の基準は、コスパがよいこと、主人が人情肌で常連さんとも親しくなりやすいこと、つまみに特徴があることなどだが、上位ランクはとくに日本人が行きやすい明洞(ミョンドン)や仁寺洞(インサドン)に近いエリアにある店を選んである。

次回訪韓時にぜひ訪れてもらいたい。

フォトギャラリー店の雰囲気、看板商品を写真でさらに見る
  • 『ウファ食堂』の女将。料理上手で家庭的な女性が多いといわれる全羅道の出身だ
  • 『ウファ食堂』のソコギジョン(韓国風ひとくち牛ハンバーグ)10000ウォン。辛いものが苦手な人におすすめ
  • 20000ウォンのコタリチムは『ウファ食堂』の看板料理。半干しの鱈と豆モヤシの激辛煮。韓国人でもヒーヒー言う辛さだが、酒が進む。シャキシャキの豆モヤシに鱈の風味が移っていて香ばしい
  • 寒さが本格化する前の11月半ば頃までは店の外でも飲める『ウファ食堂』
  • ケランフライ(卵3個入りの目玉焼き)3000ウォンと生ビールで、たったの5000ウォン。今のレートならこれに生一杯と生マッコリ1本を追加しても1000円程度。韓国版“せんべろ”が楽しめるのが『ソウル食品』の魅力

第5位 幸福カンチプ/행복한 집(鍾路3街)

ニラをたっぷり使った『幸福カンチプ』のプチュジョン。キムチ、タマネギの醤油漬け、ムール貝のスープが付いて8000ウォン。左上のマッコリはソ・ミョンソプ(人間文化財の名前が冠されている)

鍾路3街(チョンノサムガ)は、お父さん向きの大衆酒場街とおしゃれカップル向きのカフェやバー、そして、ゲイカルチャーが共存するソウル旧市街の注目エリアだ。

幸福カンチプ(ヘンボッカンチプ)はそのメインストリートに面したジョン(チヂミ)で生マッコリ(韓国では生が基本)を飲ませる大衆酒場。とくに地方のマッコリが充実していて、なかでも伝統製法で作られた釜山の金井山城(クムジョンサンソン)が4000ウォン、全羅北道の人間文化財が醸したソ・ミョンソプが5000ウォンと、隣町の観光地・仁寺洞のマッコリ専門店の半値近い価格で飲めるのがうれしい。

外観も店内もおしゃれとはほど遠いが、老若男女や国籍の分け隔てなく、誰でも気楽に飲める店だ。店の前はソウル最大の屋台街で、『幸福カンチプ』も店の前に簡易テーブルを置いたり、テントを張ったりするので、屋台感覚で楽しむこともできる。

幸福カンチプ
住所:종로구 돈의동44-4
TEL:02-747-2324 日曜定休

第4位 ソウル食品/서울식품(鍾路3街)

入りにくいにもほどがある『ソウル食品』の外観。店先に並んだアイスボックスが目印。4名以上のときは2階へ通される可能性が高い

筆者の事務所が取材コーディネートを担当した番組『世界入りにくい居酒屋』(NHKBSプレミアム)に登場しなかったら、日本からの観光客はまず入らなかっただろうと思える店。

夕方以降は酒場と化すが、じつは小さな食料雑貨店だ。

清渓川(チョンゲチョン)添いの小さな金属加工工場の密集地域にあり、本来は工場で働くお父さんたちがコーヒーやタバコを買ったり、カップラーメンを食べたりする憩いの場なのだが、3、4年前からチープでディープな酒場が好きな韓国の若者の目に止まり、ブログなどで取り上げられるようになり、今ではカップルの姿も珍しくなくなった。

サーバーから注がれる生ビールも焼酎(瓶)も生マッコリも全部2000ウォンという破格値。

つまみは目玉焼き(卵3個入り)3000ウォンからあるが、高くても10000ウォン(サンマのチゲなど)、12000ウォン(巻貝の和え物)なので、財布を気にせず飲み食べることができる。

NHKの番組を観た人はおわかりだろうが、この店の最大の魅力は、韓国の経済成長を陰で支えた工場労働者たちに酒やつまみを安く提供したいという心意気の女将(50代)。

工場街のマドンナ的存在である彼女は、食料雑貨店と調理場を兼ねた1階のテーブル数席でしか拝観できない。夕方、1~3名で訪れ、マドンナが美しく立ち働く姿を愛でながら一杯やるのは至福の時間だ。

ソウル食品
住所:종로구 관수동 102-1
TEL: 02-2267-3657 日曜定休