「元祖イェンナルコムタン」のスユク(中)40,000ウォン

韓国の物価高騰や円安で旅行スタイルを見直す人が多い。これまでは韓国=ソウルだったが、旅の基点を第二の都市・釜山にする人も珍しくなくなった。

フォトギャラリー釜山の絶品牛肉料理を写真で見る。お店の外観も!
  • 「元祖イェンナルコムタン」のスユク(中)40,000ウォン
  • 「元祖イェンナルコムタン」の外観
  • 田舎の市場らしい農具の店
  • 彦陽アルプス市場の中心部。パラソルの背後にはプルコギの店
  • 「元祖イェンナルコムタン」の店内。土日やジャンナルは混むので12時~13時は避けるとよい

食費や宿泊費がソウルより安く済むし、ここ数年、観光整備が進み、釜山ならではの魅力が鮮明になってきたからだ。今回は釜山基点の旅のモチベーションがアップする美味しい牛肉料理を紹介しよう。

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釜山タワーから見た南浦洞やチャガルチ市場、影島など旧市街の風景

釜山から高速鉄道で約25分

釜山に2~3泊するなら、滞在中、韓国南東部の田舎町を日帰りで訪れると旅のいいアクセントになる。おすすめはKTX(高速鉄道)で片道約25分の蔚山(ウルサン)だ。

行先は蔚山市の西部にある彦陽アルプス市場(オニャンアルプスシジャン)。日帰りで釜山に戻ることを考えると、ランチと田舎市場の散歩を目的にするとよいだろう。

蔚山は現代グループのお膝元として自動車製造や造船で栄えた街なので、駅舎だけはとても立派だが、タクシーに乗って数分行けば鄙びた田舎の風景になる。

蔚山は牛の産地としても有名で、西部にある彦陽アルプス市場とその周辺にはプルコギ(すき焼き風焼肉)など牛肉料理の店が集まっている。

今回の目当てはプルコギではなくスユクという牛肉を蒸し煮した料理だ。

プルコギに使われるのは日本でいう正肉だが、スユクには皮に近い肉や内臓に近い肉、頭や首周りの肉、つまり端肉が使われる。

20年くらい前までは日本の人はカルビやロースなどの正肉信仰が強い印象だったが、日本でもモツ焼きやモツ鍋などで端肉を食べる人が増えたので、その美味しさはじゅうぶん感じてもらえるだろう。

60年の古株「元祖イェンナルコムタン」のスユクとコムタン

「元祖イェンナルコムタン」のコムタン11,000ウォン

彦陽アルプス市場の中心部にある「元祖イェンナルコムタン」は、そんなスユクとコムタン(肉スープ)の人気店だ。肉は総じてやわらかく、口の中でとろけ、豊かな風味が残る。

牛肉のさまざまな部位が使われるので、ひとつひとつ微妙に違う食感が楽しめる。

旨い肉を食べると酒がほしくなる。韓国人なら、肉にはソジュ(韓国焼酎)だが、日本の人には清涼感のある生マッコリがウケそうだ。

肉→生マッコリ、キムチ→生マッコリの幸せなローテーションをぜひ体験してもらいたい。

食欲旺盛な人なら、肉をあらかた食べて残ったコムタンのスープに、ごはんを入れてかき込むのもいい。

ほろ酔いで歩く田舎の市場は楽しい。ここでは地べたで海山の幸を商う人たちを普通に見ることができる。

彦陽アルプス市場の中心部。パラソルの背後にはプルコギの店

毎月2と7の付く日はジャンナル(五日市が立つ日)と呼ばれ、周辺の農村漁村から産物を持ち寄った人たちで市場はさらに賑わう。旅程が合う人はジャンナルを狙って行くとよいだろう。

「元祖イェンナルコムタン」

「元祖イェンナルコムタン」の外観

住所:蔚山市 蔚州郡 彦陽邑 チャント2ギル 11-5 営業時間:7時~20時30分 定休日:毎月10日、20日、30日

鄭銀淑:ソウル在住の紀行作家&取材コーディネーター。味と情が両立している食堂や酒場を求め、韓国全土を歩いている。日本からの旅行者の飲み歩きに同行する「ソウル大衆酒場めぐり」を主宰。著書に『美味しい韓国 ほろ酔い紀行』『釜山の人情食堂』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』など。株式会社キーワード所属。