韓国といえば、男子も女子も豪快にお酒を飲む国という印象をもっている人が多いのでは? それは100%当たっていて、いいことがあってもなくても何かにつけてお酒を飲む国柄だ。
お酒の多彩さでは、地酒が発達している日本に及ばないが、居酒屋の主人と客が作り出す熱気は日本を上回る。
筆者はこの夏、大阪で行ったトークイベントで、『韓国居酒屋ベスト10ソウル編』を発表した。今回はその前編として10位から6位を紹介しよう。
選考の基準は、コスパがよいこと、主人が人情肌で常連さんとも親しくなりやすいこと、つまみに特徴があることなど。
地元客が多い店がほとんどなので最初は少し勇気が要るが、入ってしまえば居心地のよい店ばかりだ。
第10位 自喜香/자희향(仁寺洞)
食材が豊かなことで知られる全羅道(チョルラド)出身の女主人が作るおつまみが、舌の肥えた常連客を喜ばせている店。
韓国ではどんな食べ物にもキムチやナムルなどの小皿料理が添えられるが、この店のそれはひと味もふた味もちがう。
筆者は最初につきだしとして出てくるナムルが大好きで、これだけでマッコリ1本を空けてしまうほどだ。
マッコリは主人自らが醸していて商品化されている。アルコール8度と12度の自喜香マッコリと、6度のかぼちゃマッコリが人気だ。
常連さんには芸術家が多いので、運がよければ全羅道の名物パンソリ(民俗芸能)が聴けるかもしれない。
住所:종로구 경운동 64-25 TEL:02-723-0166 日曜定休
第9位 文化空間アリラン/문화공간 아리랑(安国洞)
バーであり、カフェでもあるのだが、遅い時間に個性的な客が顔を出す雰囲気は日本の人気ドラマ『深夜食堂』のようでもあり、新宿ゴールデン街辺りのディープな飲み屋のようでもある。
主人のチェ・ウンジンさんは役者であり、1930年代の漫謡(コミカルな大衆歌謡)の歌い手でもある。
店ではときにはチェさんの歌が入ったCDがBGMになったり、彼女の興が乗れば生で歌ってくれたりする。
夜が更けると彼女を慕う作家、芸術家たちが集まってくる。
10名ちょっと座れば満席。
そのため、隣席の人と自然に言葉を交わしたり、グラスをぶつけ合ったりするようになる。
筆者の著作の熱心な読者さんは年に数回この店を一人で訪れ、もはや常連だ。
住所:종로구 안국동 107-1 TEL: 02-734-1009 日曜定休(臨時休業あり)
第8位 トンチョン・ポウォン/돈정포원(永登浦)
「儲からなくたっていいの。ウチで飲み食いして笑顔になってもらえたら、私も幸せだし、食べていけるんだから」
こんな泣かせることを言うのは、ソウルの江南エリア西側の永登浦(ヨンドゥンポ)伝統市場にある『トンチョン・ポウォン』の女将。全羅北道の黄海に浮かぶ離島からソウルの永登浦にやってきた苦労人ならではの言葉だ。
ソウル版“せんべろ”酒場の代表といえるこの店は、焼酎もマッコリも1本3000ウォン、ビールは4000ウォン。
つまみは3000(茹で豚肉)~5000ウォンが主流で、しかも盛りが多い。タッカンマリと焼酎1本のセット11000ウォンなどという激安セットもある。
小腹が空いたときはユッケジャンやコンククス(冷たい豆乳スープの麺)3000ウォン、豆もやしのビビンパ2000ウォン。
こちらも破格だ。7000ウォンのペクハプタン(ハマグリ汁)というスープは酒や辛いもので焼けた口中を癒してくれる。