東台湾の台鉄の駅はリニューアルして立派になったものも多いが、関山駅の色あせたホームも味わい深かった

東海岸沿いをのんびり南下していた筆者だが、旅程が半ばであるにもかかわらず、台湾を半周もしていないことに気づいて一気に南下し、台頭を経由して台湾第二の都市・高雄へ向かった。

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  • アーケードの一角でチマキを販売する女将さん。手作り感たっぷりの独特なチマキが食べられる
  • 鹽埕のアーケード街。古い店がまだ現役でがんばるなか、若者がカフェや雑貨店をオープンする傾向もある
  •  鹽埕の市場が雑貨屋に変身。可愛らしいカードや巾着袋を販売している。表示してある金額を小銭や電子マネーで払う無人システム
  • 『叁捌旅居』でいつも留守番をしている犬の牛牛(ニョウニョウ)。牛のような模様なのでこの名前だとか
  • かつて「正美」という名のウェディング・サロンだったこの場所を、3代目が『叁捌旅居』という民宿にリフォーム。MRT鹽埕埔駅から近く、近所には食堂や市場もあって便利
フォトギャラリー関山(グアンシャン)の朝グルメを写真でさらに見る
  • 【台湾食べ歩きの旅 #11】阿美族の女性たちの宴に飛び入り参加させてもらう筆者(左から2番目)。なじみのない阿美族の言葉が耳に新鮮だ
  • 【台湾食べ歩きの旅 #11】廟脇の朝市の一角に円卓が置かれ、卵焼きと保力達(パオリータ)が並んでいる。養命酒をもっと甘く濃くしたような栄養ドリンク
  • 【台湾食べ歩きの旅 #11】駅から北へ自転車を走らせると見えてくる関山天后宮。小さな廟だが、これでも歴史は100年以上
  • 【台湾食べ歩きの旅 #11】雨に濡れてしなる関山の稲穂。遠くの山々は雨雲と霧でほとんど見えない。暑い夏を控えた恵みの雨なのかもしれないが、サイクリングには向かない
  • 【台湾食べ歩きの旅 #11】 夜市の定番メニューの割包は、カロリーが高いので朝食べたほうがヘルシーかも。豆乳との相性もいい

東海岸の名もない町から台東、高雄へ

無計画な旅というのは、締め切りが一週間後に迫った原稿に似ている。

まだ一週間ある、と思って最初のうちは時間をかけて推敲するのだが、一週間を半分過ぎたのに原稿が進まないと焦ってくる。

台湾一周の旅も、最初は「この駅で降りてみたい」「あの町もよさそう」とちょこちょこ途中下車をするのだが、日程が半分を過ぎてもまだ半周できていないと、移動距離を延ばすことになる。

東台湾でのんびりしていたら、もう4日目なのに高雄にたどり着いていないことに気づき、あわてて関山から高雄までの切符を買った。途中の台東駅で乗り換えのために下車。

しかし、台東の街でのんびりする時間はない。せめてもと名物の池上飯包(弁当)を買い込み、高雄行きの列車に乗り込んだ。

台東駅構内のファミリーマートでは池上飯包(弁当)が売られていた。木箱が弁当の湿気をちょうどよく吸ってくれるため、冷めても美味しい池上米が味わえる

台東→高雄の車窓にうっとり

「何日あれば台湾を一周できますか?」とよく聞かれる。列車に乗りっぱなしでもいいなら、2日もあれば一周できるのだが、よほどの鉄道好きでなければ味気ない。

とはいえ、台東から高雄間の車窓は、ずっと眺めていても飽きないくらい美しい。台東エリアには荘厳な山々と車窓いっぱいに広がる田園風景。秋ならば黄金の稲穂が揺れるのが見えるかもしれない。

そして延々と水平線が続く太平洋と椰子の木が並ぶ海岸線を望むこともできる。

台湾の南東部から南部にかけて走る台鉄の車窓。太平洋が一望できる

果樹園やビンロウの林、養魚場なども風景に入り込んできて、目まぐるしい変化にいちいちカメラを向けてしまう。

台鉄の自強号は新幹線ほどスピードが速くないので、車窓もゆっくりと流れていく。

朝の9時過ぎに関山を出発し、台東で乗り継ぎのために30分ほど待ったため、高雄に到着したのは13時少し前。およそ3時間半の旅だ。

この3時間半を「移動」と考えるとずいぶん長い気がするが、車窓を楽しんだり、次の町で食べたいものを考えたりする休息時間と考えると、旅はとっても優雅になる。

もちろん、しっかり眠って体力をチャージするのもいい。