3年半ぶりの台湾旅行。【台湾食べ歩きの旅】連載2回目は牡蠣オムレツに続いて、ガチョウ肉でビールが飲める人気店に向かう。
夜市の屋台。ビールを出すべきか出さざるべきか、それが問題
台湾旅行といえば夜市。初めて台湾を訪れたら、台北市内に何か所もある夜市のいずれかに足を運んでほしい。
最大規模の士林夜市。食べ物がおいしいと評判の寧夏夜市や臨江街夜市など、選択肢はいろいろある。
私は30年来の友人ヤンくんの家族が経営する臨江街(リンジャンジエ)夜市の蚵仔煎(オアジェン/牡蠣オムレツ)屋台の一席に陣取った。
この店のメニューは蚵仔煎と、あんかけスープのみ。この2品だけで60年ものあいだ生計を立ててきたヤンくんのお父さんは80歳を超え、店先に立つことは少なくなった。
この家族にはヤンくんを含め4人の息子がいるのだが、今は三男が主に店を回している。
混雑する屋台のテーブルの隅っこに座り、蚵仔煎が焼けるのを待っていると、見慣れないものがあるのに気づいた。
店の一番奥に、縦長の冷蔵庫が置いてあり、炭酸飲料などのドリンクが冷えている。なんと一番上の段には台湾ビールまで。
夜市の店は客をどんどん回転させることが大事なので、普通はアルコールを置いていない。
驚いてヤンくんに聞いてみると、「オレが設置したんだ」と得意げな顔でビールを1本ごちそうしてくれた。
蚵仔煎屋台で台湾ビールが飲めるなんて夢のようだ。けれど、この冷蔵庫を設置したことでヤンくんは両親と大喧嘩になり、「出ていけ」と怒鳴られたのだとか。
「客はドリンクなんか飲まない」「酒なんか置いたら客が居座ってしまう」と父親は冷蔵庫設置に断固反対。
「でも、暑くなれば客は冷たいものが飲みたいはずだし、アルコールがあっても蚵仔煎とスープしか出さない屋台に客が長居するとも思えない」。
そう言って、勝手に冷蔵庫を導入したヤンくん。
すると、彼の読みどおり、大人の客は蚵仔煎にビールを1本追加し、子供は炭酸飲料を追加して注文するようになった。
徐々にドリンクの売上が伸び、今では両親がビールを仕入れるようになったとか。ゴリ押ししたヤンくんの粘り勝ちである。