ガチョウ肉のスライスに舌鼓
蚵仔煎屋台で小腹を満たした後は、飲みかけのビールを持って次の店へ。臨江街夜市を訪れるとかならず足を運ぶ食堂が裏通りにある。
「鵝肉池」という店名通り、ガチョウ肉がおいしく、肉汁の池で溺れてしまいそうな店なのだが、麺やスープも揃っているので、普段使いで夕食を食べに来るカップルや家族連れもいる。
店内にビールは置いていないが、持ち込みはOK。
観光客はほぼいないが、地元の人がひっきりなしに訪れる。
とても気に入っているので、これまで拙著『台湾一周!!途中下車、美味しい旅』(双葉社)でしか紹介していない。
ややぽっちゃりした、笑顔のかわいい若い女性がカウンターでガチョウ肉をぶった切りにしているのだが、この日は彼女の両親とおぼしき中年の男女も店に立ち、忙しそうに客の相手をしていた。
私が日本人だとわかると「もっと日本人のお客さんに来てほしいから帰国したら宣伝してくれ」というので、ここはしっかり紹介しておきたい。
ガチョウ肉は、鶏肉やカモ肉よりも脂が少なくてヘルシーだが、うまく調理されていれば、ほどよい噛みごたえがあり、とてもジューシーだ。
この店ではいろいろな部位を売っていて、胸肉やもも肉などを自分で選ぶことができる。カウンターに並んだ部位を見ながら「これ」と指させば、その場でスライスして皿に盛ってくれる。肉の量もこのときに自分で選べる。
薄くスライスされたガチョウは、したたる肉汁と皮からにじみ出る脂の甘みがたまらない。
そのまま食べても十分おいしいのだが、細切りショウガと甘辛いタレでいただくと、これまたうなるほど美味。
扉のない開放的な食堂で通りの車が行き交うのを眺めながら、肉とビールを交互に口へ運ぶ。ありがたいことに、台湾の湿度がいっそうビールをおいしくしてくれる。
「鵝肉池」のご主人と女将さんは若いので、引退はまだまだ先だが、いつ来ても娘さんがカウンターを任されている。聞けば、長女はとっくに海外へ嫁に行ってしまったそうで、仕方なく次女が店を手伝っているのだとか。
「この子はどこにもやらないの」と笑う女将さんの横で、娘も一緒になってケラケラ笑う。まだ20代前半だそうだが、すっかり若女将が板についている。
(つづく)