ふだんは朝寝坊なのに、旅行となると早く目が覚めてしまう。そんな人も少なくないはず。早起きすると得した気分になり、さあ今日の一食目は何を食べようか、どこに行こうかと、布団の中で思いを巡らすのはじつに楽しいものだ。
今回は食べ歩きで疲れ気味な胃腸にやさしく、一日の活力になりそうなソウル、仁川、釜山のとっておきの朝ごはんを紹介しよう。
ソルロンタン(ソウル)
牛の骨や肉を煮込んだソルロンタンは、日本からの旅行者にもすっかりおなじみになった韓国料理のひとつ。ソウル生まれの食べ物だけに、ソルロンタンの専門店は多いが、百年以上の歴史がある『イムン(里門)・ソルロンタン』はそのなかでも最古参に当たる。
白濁したスープは、韓牛(ハヌ)の足の骨や各部位の肉を長時間煮込んだもの。スープの中には頭や膝、胸、舌などさまざまな部位の肉が隠れていて、さまざな食感と風味が楽しめる。
ソルロンタンは客が自分の好みで塩を加えて食べるのだが、塩分が気になる人は塩はひかえめにして、食べ放題のキムチを味のアクセントにしてもよいだろう。
ここのソルロンタンはスープの下にごはんと素麺が入っているクッパ(クッ=汁、パ=ごはん)タイプ。ごはんがもう少しほしいときは、「パッ チョムトォ ジュセヨ(ごはん追加してください)」言えば、足してもらえる。
イムン・ソルロンタン
鍾路区堅志洞88 TEL:02-733-6526
8:00~21:00(日曜8:00~20:00) 無休
※ラストオーダーは閉店1時間前
テジクッパ(釜山)
テジは豚、クッパは汁かけ飯。テジクッパは牛肉や牛骨を煮込んだソルロンタンの豚肉バージョンだと思えばよい。ソウルではなかなかお目にかかれないが、釜山を中心とした慶尚南道(キョンサンナムド)ではよく食べられている。
60年以上の歴史がある『ハルメクッパ』は以前から地元の人たちに愛されている店だが、一昨年、韓国の人気グルメ番組で紹介されて以来、週末は行列ができるまでになった。筆者は「釜山のおすすめ店は?」と問われたら、かならずといっていいほどこの店を挙げている。
豚の臭みが出ないよう、骨と肉を適度に煮込んだスープは半透明で、他のテジクッパの店の白濁したスープと違って淡白だが、豚の旨味はしっかり出ている。唐辛子は少ししか使われていないので辛くなく、朝ごはんにびったり。
筆者は朝だろうが昼だろうが、まず豚肉や付け合わせのキムチ、生タマネギのスライス(辛くない)をつまみにマッコリを飲み、残ったスープにごはんを入れ、アミの塩辛やニラを入れてかき込むのが大好きだ。
ハルメクッパ
東区凡一洞28-5 TEL:051-646-6295
10:00~20:00 日曜休
チャンチククス
日本のにゅうめんや素麺にも似た細い麺(ククス)に、関西風の澄んだあたたかいスープをかけたもの。トッピングは店によって違うが、たいてい海苔、ネギ、ニンジン、ズッキーニなど。
チャンチとは宴会のことで、韓国では結婚披露宴の〆に出されることが多い。忙しいときや小腹がすいたとき、日本の立ち食いそばのように気軽に食べられる。
スープが少しぬるく感じるのは、サッと食べるためと麺がのびないようにするため。
軽食店や飲み屋の屋台などでは一杯4000~5000ウォンするが、釜山の地下鉄のチャガルチ駅と南浦(ナムポ)駅の中間にある釜山銀行斜め前の『クポ(亀浦)・ククス』なら、イリコのきいたスープの麺(メニュー名はヤンプンイククス)が2500ウォンで食べられる。
クポ・ククス
中区南浦洞5街64-3 TEL:非公開
7:30~21:30 無休
プゴクッ(ソウル)
プゴクッとは、内臓を取り去ったスケトウダラを海風にさらして1カ月ほど干したもの(プゴ)を煮たクッ(スープ)のこと。
韓国では二日酔いのときに食べるものというイメージが強いが、スケトウダラは美肌効果があるといわれるアミノ酸を多く含むため、日本では美容食として注目された。
半日くらいタラを煮込んでつくるあっさり味のスープには、干しタラの切り身、ふわふわの玉子、豆腐、ネギが浮かんでいる。卓上のエビの塩辛を入れて塩加減を調節するとよい。
スープを飲み干してまだものたりなかったら、店員さんに「クンムル チョム ジュセヨ(スープください)」と言えば、気前よくつぎ足してくれる。ときにはタラの身をくれることも。
筆者がこの店を初めて取材したのは20年近く前になるが、日本から来た旅行者を案内すると、ほぼ全員が「韓国にもこんな繊細なスープがあるんですね」と喜んでくれる。ソウルのベスト朝ごはんだ。
ムギョドン・プゴクッチッ
中区茶洞173 TEL:02-777-3891
7:00~20:00(土日7:00~16:00) 無休
※ラストオーダーは閉店の1時間前