7月の猛暑、8月の不安定な気候で、日本では体調を崩している人も少なくないと聞く。
私たち韓国人はこんなとき、しっかり食べて体力を回復させようとする。
特に唐辛子を多く用いた辛い物を食べると、かいた汗が蒸発して皮膚表面の熱を奪うので涼しくなれる。また、舌がしびれるほどの辛さは韓国人には시원하다(シウォナダ)=すっきり感に結びつく。
辛いものは一種の気付け薬なのだ。今回は、日本からの旅行者が気軽に食べられるソウルと釜山の激辛料理をいくつか紹介しよう。
旬の太刀魚、激辛煮付け(カルチチョリム) ソウル南大門市場
太刀魚(カルチ)は日本でも地域によってはよく見かけるが、韓国ではもっと存在感がある。
刺身、揚げ焼き、塩焼きなど、食べ方はいくつかあるが、ソウルで一般的なのはカルチチョリムと呼ばれる煮付けだ。厚めに切った大根を鍋の下に敷き、その上に太刀魚の切身を置いて、たっぷりの唐辛子粉や醤油系のタレ、ニンニク、生姜、砂糖や蜂蜜などで煮込んだもの。
日本の人ならヒーヒー言う辛さだが、魚の旨味が生きていて、辛さのなかに多少の甘さもあるので、白飯を食べながらいつのまにか完食してしまう。太刀魚の身も美味しいが、筆者は味のしみた大根に目がない。これをつまみに昼間からマッコリを飲みたくなってしまう。
おなじみの南大門市場にはカルチチョリムの専門店街がある。崇礼門(スンレムン)を背に南大門市場のゲート1を入り、右手の4番目の細い路地を入った辺り(C棟とD棟のブロック)に店が集まっている。
辛いスープとごはんとキムチでたったの2000ウォン! ソウル鍾路3街
日本の旅行者にもなじみ深い仁寺洞(インサドン)エリアにあるタプコル公園の北側と接する楽園商街(ナグォンサンガ)ビルの周辺には、良心的な価格の飲食店が集まっている。
その代表が1食2000ウォン(約200円)の「ソムンナンチッ」。この店は牛肉でダシをとった汁で大根や白菜の葉、それと豆腐ひと切れを煮込んだスープだけで60年間商いを続けている。
創業者は朝鮮戦争のときに北側から命からがら避難してきた人で、「飢えることがどれだけ大変なのか身に沁みしているので、薄利多売でやっている」というから泣かせる。
通りに面した店先の大鍋で煮込まれているスープは、澄まし汁のようで辛そうには見えないが、コショウがたっぷり使われているので、日本の人にはけっこう辛く感じられるだろう。逆に辛さが足りないという人は卓上の赤唐辛子粉を足すといい。
ソムンナンチッ
鍾路区楽園洞241 TEL:02-2742-1633
4:30~22:00 無休
東大門近くの下町名物、激辛豚足(メウンチョッパル) ソウル昌信洞
東大門のシンボルである興仁之門(フンインジムン)の東側の路地裏にある昌信市場(チャンシンシジャン)は、もともと地元民のための生活市場だったが、激辛豚足(メウンチョッパル)が名物となったため、外部からも客が訪れるようになった。
ハングルが読めなくても、激辛豚足の店はたいてい原色の赤い看板を掲げているので、すぐわかるだろう。店先でまっかな薬味ダレにくぐらせた豚足を網で焼き、目に染みるような煙を上げている。
日本で豚足というと、足のつま先辺りについた肉(皮)をしゃぶるように食べるイメージがあるかもしれないが、韓国ではつま先からスネ辺りまでを指すので、たっぷり肉が付いている。
韓国人にとって豚足は酒のつまみ。ひと口かじっては、キンキンに冷えた焼酎を飲むのが醍醐味だ。そして、生のニンニクをかじり、また豚足に食らいつく、さらに焼酎を流し込む。
お酒好きな人には韓国式に楽しむことをおすすめめしたいが、もちろんごはんのおかずとして楽しんでもよい。ごはんを注文するためには、「コンギパッ ジュセヨ」(ごはんください)の言葉を覚えておこう。
※メウンチョッパルの店は、東大門駅の3番出口を出てそのまま進み、最初の路地を左折したところにある昌信市場の通りに数店ある。
辛くて酸っぱいクセになる麺(ハルメククス) 釜山南浦洞
チャンチククスと呼ばれる韓国式そうめんは、日本の立ち食いソバのように気軽に食べられる麺だ。食べ方は、イリコダシの澄んだスープをかけたものと、辛くて酸っぱいタレと混ぜて食べるもの(ピビムククス)の二通りある。
釜山の繁華街、南浦洞(ナムポドン)にはピビムククスの老舗がある。港町らしく魚介がのっているため、フェククスと呼ばれる。フェは刺身のことで、この店ではエイの刺身が使われている。そのほかサンチュ、キャベツの千切り、ワカメ、塩辛、真っ赤なソースが麺の上にのっていて、食べる前によくかき混ぜる。
見た目よりもずっと辛いので、いっしょに出てくるイリコダシのスープを飲んで辛さを抑えるといい。
ハルメチッ・フェククス
中区南浦洞2街15-14 TEL:051-246-4741
10:00~22:00 無休