中村勘九郎

2000年(平成12年)の東京・浅草に始まり、大阪、名古屋、さらには日本を飛び出してニューヨークなどでも上演されてきた「平成中村座」。いよいよ11月、令和最初の公演として九州に初お目見えする。創設者である父・十八世中村勘三郎の思いを受け継ぐ中村勘九郎が、会場予定地に隣接する小倉城で意気込みを語った。

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「父は常々、歌舞伎をまだ観たことがない多くの方々にも面白い芝居を見せたいと言っていました。特設劇場の平成中村座ならどこへでも行けるし、舞台と客席の距離も近い。浅草で初演した時の本当に嬉しそうな父の横顔を今でも覚えています。あれから19年、試行錯誤を重ねながら、父の夢をみんなで形にしてきました。今回、ようやく九州での公演が決まってとても楽しみですし、身の引き締まる思いです」

昼の部は、歌舞伎の醍醐味が詰まった見取り狂言。『神霊矢口渡』では中村七之助が初役でお舟を勤める。「いつか七之助で観たいと思っていた情念溢れる作品」と勘九郎も期待を寄せる。続く『お祭り』は清元節による華やかな舞踊が楽しめる演目だ。「なかなか祖父のようにできないと言っていた父が、ようやく汗をかかずにできるようになったのが50歳を過ぎてから。僕はまだ37歳ですが、今できる僕の『お祭り』をお見せしたい」と表情を引き締める。そして三本目は『恋飛脚大和往来 封印切』。「第2回平成中村座で、本興行とは別の若手の試演会で(中村)獅童さん、七之助と『義経千本桜』を演じました。大役を終えた時、またやりたいねって握手して。18年後にまたこの3人で本興行の舞台に立てるのは感慨深いですね」

夜の部は、ご当地小倉のお家騒動を描いた通し狂言『小笠原騒動』。本水を使った大立ち回りや早替りがあるケレン味あふれる作品だ。「小倉でやると決まった時に、これしかないと思いました。おじの芝翫が演じるのを観てすごく感動したんです。水がかかるよう(笑)、最前列で観たこともあります。」勘九郎や七之助が二役を演じ分けるのも見どころで、「僕は大悪党・犬神兵部と、彼に翻弄される小悪党・岡田良助を演じます。良助一家の愁嘆場は皆で相談しながら作りあげたいです」

“江戸の芝居小屋”にタイムトリップしたかのような気分が味わえる平成中村座。お客様を楽しませる仕掛けも満載で、十八世にちなんだ十八個の勘三郎の目が場内のあちこちに描かれた“隠れ勘三郎”もそのひとつ。また、小屋の周りには、平成中村座最多の店舗数となる「二十軒長屋」が設けられ、一般客にも開放される。「チケットがなくても江戸の文化に触れることができます。『お祭り』と『小笠原騒動』では、舞台の後ろを開けて外が見えるという演出があるので、中の方も外の方も(笑)どうぞお楽しみに!」

「平成中村座小倉城公演」は11月1日(金)から26日(火)まで北九州市・小倉城勝山公園内特設劇場にて開催。チケットは9月21日より発売。