3.「恥さらし」と実家の父親に言われて
「離婚は簡単」。そう思っていた妻は、初めて見る夫の激昂した姿が今でも忘れられないといいます。
「確かに不倫は悪いことだけど、それだって原因は自分でしょう?もっと私や家のことをしてくれていたら、不倫もしなかったのに」それは、パートを選んだのも独身の男性社員と肉体関係を持ったのも、すべて夫のせい、と思っているから出る言葉でした。
予想以上に怒りを見せた夫に対して恐怖を覚えた妻は、子どもを連れて実家に帰ることを思いつきます。
「実家の父母にはなんて言おう、旦那がひどいって説明したらわかってくれるかな」こんな考えで実家に足を向けた妻でしたが、「ただいま」と玄関のドアを開けたとき、すぐに出てきた父親から「この恥さらしが。何をしに来た」と怒鳴り声が飛んできたそうです。
びっくりして固まっている妻に、父親は「○○くんから話は聞いた。
不倫して離婚したいだなんて、何を考えているんだ!」と、女性が家の中に入るのを許しませんでした。
「ひどい、そんなこと言ったの?」と妻はうろたえますが、不倫をしたのも、離婚の理由がそれであることも、告白したのは自分です。
「お前は我が家の恥だ。
帰ってくることは許さないし、自分で何とかしなさい」
母親はショックで寝込んでいるから電話なども一切するな、とそのままドアは閉められ、妻は呆然と立ち尽くします。
4.「離婚は簡単」ではない現実
結局、この女性は離婚せず、夫に「許してください」と頭を下げて今も結婚生活を続けています。
離婚すれば独身の彼と一緒に暮らせる、家事を何もしない夫とも離れられる、と「簡単に」考えていた女性は、何より不倫が許されるものではないこと、それが周囲にはネガティブな衝撃を与えることを、忘れていました。
実家から見放され、友人に相談しても「あなたが悪い」「何を考えているの」と呆れられ、自分の甘さを思い知った女性には、夫に謝罪する道しかありませんでした。
独身男性と縁を切ることやパートを辞めることなどを条件に夫は離婚届を破り捨てましたが、それからこの妻に話しかけることはなくなり、家庭内は完全に冷え切った空気になっているといいます。
「夫が帰宅するのが怖いの。
何も言わないし、話しかけても無視されるし。
娘は何も知らないけど私たちの仲が悪いことは気づいているし、私、これからどうすればいいのだろう」と頭を抱える妻を見ていると、無計画な離婚は決してうまくいかないこと、安易に不倫を選び、打ち明けることで身近な人を傷つけ苦しめることの罪の重さを、改めて思い知らされます。
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「離婚は簡単」。こんな言葉を信じた女性は、後先を考えずに「私も」と動いてしまったことで、最悪の結果を招きました。
悔やんだところで、事実は取り消せません。彼女にできることは、自分のしたことを反省して許しを乞うことだけです。
その努力すら「私のせいじゃない」と思うのなら、一生誰からも愛されない現実が待っているといえます。