子どもに支配的に接したり、なんとかコントロールしようとしたり…。

近年焦点が当たっている、子どもを攻撃せずにはいられない毒親。肉体的虐待とは違って、心理的な虐待の多くは無自覚だといいます。

「子どもを自分の所有物とみなしているからこそ、自分の好きなように扱ってもいいと思い込む。これは子どもを虐待する親に共通して認められる傾向です。

所有意識が強い親は子どもに暴力を振るうだけではなく、子どもを支配し、コントロールしようとすることもあります。この手の心理的虐待は、子どもの心をひどく傷つけます」と精神科医の片田珠美先生は話します。

支配欲求は、日々の生活から友人関係にまで及び、進路、結婚と子ども時代から大人になっても続きます。

子どもが苦悩から、身体的・精神的な不調をきたしても、多くの親には自覚がありません。むしろ子どものために良かれと思ってやっている親がほとんどです。

もっとも、虐待の自覚がないとはいえ、根底には親自身を良く見せることができるという思惑が潜んでいます。

「子どもが、いい学校、いい会社に入ることを親が願うのは、子どもの幸福のためだと親は思っています。しかし、実際には子どもがいい学校、いい会社に入れば、親自身を良く見せることができ、自慢できるという思惑や打算が潜んでいることが少なくないのです」(片田先生)。

このような思惑による押し付けが子どもを苦しめます。

今回は、片田先生の著書『子どもを攻撃せずにはいられない親』から、“攻撃する親”に多い5つの特徴をご紹介します。

攻撃する親に多い5つの特徴

1 子どもを支配しようとする

何にでも干渉し、細かく指示し、思い通りにしないと気がすまない親。

言うことを聞かない“悪い子”には、「言うことを聞かないなら・・・」という言い方で脅します。その典型が過保護・過干渉です。

摂食障害で通院している二十代の女性は、子どもの頃から母親の過保護・過干渉にどれだけ悩まされてきたかを話してくれた。
「母は、几帳面で完璧主義で、いつも家の中をピカピカに掃除していました。『冷凍食品やレトルト食品を食卓に並べるのは子どもがかわいそう』というのが口癖。(中略)
ですが、少しでも散らかしたり、服を汚したりすると、とたんに血相を変えて、『きれいに片づけなさい。お母さんの言う通りにしないのなら、家から追い出して施設に入れる』
『服を汚さないで。言うことを聞かないのなら、もう服を買ってあげない』などと怒鳴るので、とても怖かったです」。

出典(『子どもを攻撃せずにはいられない親』)

「あなたのために言っているのにどうしてわからないの」と自覚がないからこそ、自分の思い通りにならない娘に腹をたて、娘の胸中に罪悪感をかき立てる言葉を吐いたのです。

このようにとくに子どもを支配しようとする親は、良かれと思ってやっていることが多く、そのため親も子ども自身も支配だと気づきにくいのです。

2 子どもの気持ちよりも世間体や見栄を優先する

子どもを自分の所有物とみなしており、所有意識が強い親。

子どもの気持ちよりも世間体や見栄を優先します。

子どもの気持ちよりも世間体や見栄を優先する親が本性を現すのが、進学と結婚という節目である。
「中学受験に失敗したときに、母から『恥ずかしくて、近所を歩けない』と言われた」
「高校受験で公立に落ちて、私立に通うことになってしまい、父から『うちの家系はみな国公立なのに、恥ずかしい』と言われた」という類いの話を聞くことも少なくない。

出典(『子どもを攻撃せずにはいられない親』)

また進路に関する子どもの希望を無視し、親の思い通りにするための常套句は「あなたのためにいろいろ犠牲にしてきた」、「あなたのことを思うからこそ、こうするのがいい」。そう言って価値観を押し付けます。

3 お金で支配しようとする

子どもは経済的に親に依存しなければ生活できません。

そのため子どもの自由を支配したい親は、“お金”を持ち出すことが多いようです。

子どもへの支配欲求が強い親は、すぐお金を持ち出すことが少なくない。
「誰がお金を出していると思っているんだ」
「誰が食べさせてやっていると思っているんだ」という言い方で、子どもの口答えを封じ込もうとする。
こういう親の主張は、ある意味では正論である。
たしかに、食べ物や服をはじめとして必要な物すべてを子どもに与えているのは親なのだから。ただ、親には子どもを養育する義務があるはずだ。
また、子どもはお金を稼ぐことができないので、経済的に親に依存するしかない。
にもかかわらず、すぐお金の話をして、恩着せがましい態度を示すのは、子どもからすれば攻撃以外の何物でもないだろう。

出典(『子どもを攻撃せずにはいられない親』)

親が望む進路でなければ「学費を出さない」と言われ、進路を変更したことで、子どもが将来にわたって「自分の人生、これで良かったのか」と後悔や苦悩にさいなまれることも少なくありません。