4 子どもを罵倒する

子どもをちょっとしたことで怒鳴ったり、汚い言葉で罵倒したりする親は子どもの心を傷つけます。それがトラウマになることもあります。

子どもを罵倒する親は、感情のコントロールができないことが多い。そのうえ、自分は親なのだから、子どもに何を言っても許されると思い込んでおり、自分の言葉がどれだけ子どもを傷つけるかに想像力を働かせることもできない。
だから、信じられないような言葉で子どもを怒鳴りつける。
「あんたなんか産むんじゃなかった」
「あんたがいなければ、お母さんはお父さんと離婚できて幸せになれたのに」
「何やってるんだ。そんなことをするなんて、お前バカじゃないのか」
「お前みたいな役立たず、死ね」
しかも、こういう暴言を吐かれて育った子どもが、成長して親になってから同じような言葉で我が子を罵倒することも少なくない。こうして言葉の暴力による心理的虐待が連鎖していく。

出典(『子どもを攻撃せずにはいられない親』)

5 兄弟姉妹で格差をつける

兄弟姉妹のうち誰か一人を“希望の星”とみなし、お金をかけて育てます。

一方、その子以外には、お金をかけず、必要な物も与えず、手伝いを強要します。それに対して子どもが文句を言うと、暴力を振るうこともあります。

このような格差を子どもたちは敏感に感じ取ります。

「私は弁当をつくってもらったことなど一度もないが、弟も妹もつくってもらっていた」
「父が出張でいなかったとき、テーブルに母と弟の分のご飯しか並んでいなかった」
「兄は習い事にも塾にも通っていたけど、僕はどこにも通わせてもらえず、学校から帰ったらすぐ家の手伝いをさせられた」
このように兄弟姉妹で格差をつけることが子どもの心を傷つけ、後々まで禍根を残すこともある。

精神科の診察室で患者から、「自分はずっと“搾取子”だったので、親を恨んでいるのですが、そのことについて親に何も言えません。そのため、もんもんとしています。どうしたらよいでしょうか」と相談を受けたこともある。
精神科医としての臨床経験からも、親から可愛がられる“愛玩子”とそうではない“搾取子”と言う対比は的確だと思うのだが、“愛玩子”だからといって、幸福とは限らない。
問題は、すぐ〝愛玩子〟を変える親である。こういう親を持つと、自分は“搾取子”だからと諦め、それなりに安定していたのに、“愛玩子”だった兄弟姉妹が親の思い通りにならなくなったため、親の関心が急に自分に向けられるようになり、当惑することもあるようだ。

出典(『子どもを攻撃せずにはいられない親』)



昔は貧しさゆえに単に子どもを労働力とみなし、学校に行かせないなど、あからさまな支配がありました。

今ではそういうことはなくなり、恵まれているように見えますが、このような親自身も自覚しにくい心理的な虐待で子どもを苦しめている家庭は少なくないと片田先生は述べています。

親子の人間関係は家庭によって違いますが、子どもにとって心理的な負担が大きいと心身の不調をきたし、長い間子どもが苦しむことになりかねません。

自分が親の立場であっても、子どもの立場であっても、こういうことをするのは酷い親だという自覚を持つことが必要です。

【参考著書 著者】片田珠美
広島県生まれ。精神科医。
大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。
DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。

精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析的視点から分析。
無差別殺人の精神分析』(新潮選書)、『他人を攻撃せずにはいられない人』(PHP新書)、『高学歴モンスター』(小学館新書)、『一億総他責社会』(イースト新書)、『怖い凡人』(ワニブックスPLUS新書)など著書多数。

美容ライター。美容誌の編集を経て、ビューティ&ヘルス、フード、ファッション、ナチュラルライフなどについて執筆。美容ブログ『SimpleBeauty』でもコスメ情報を更新中。WebメディアのほかHP、紙媒体も手掛けています。