―今年の出演者のブッキングに関してはどんなことを考えていますか?

成田:「夏の魔物」でしか見れないもの、東京では体験できなくてお客さんがわざわざ『青森』まできてくれないと体感できないものというのを意識していて。

前までのものばかりじゃなくて新しいものも入れたいというそのバランスを取って10周年のブッキングをしています。

―ユニットの『夏の魔物』に関してはいかがですか? 「やついフェス」にも出演していますし、今年は「鬱フェス」にも初出演が決定していますが、どんなところを見て出てもらおうと思ったのでしょうか。

やつい:とにかく、出たいって言ってくれるから。

一同:ははははは!

成田:大槻(ケンヂ)さんが毎年夏の魔物に出てくれるようになったのは、「やついフェス」がきっかけなんですよ。俺は「やついフェス」に毎年行ってるんですけど、渋さ知らズを観ている大槻さんを発見して、タタタタって走って行って、「大槻さん、ずっと連絡している者なんですけど…」って。

やつい:会っちゃうと断れないもんね~。

天馬:大槻さんが、「どんな感じでも「夏の魔物」と「鬱フェス」は毎年出るから」ってこの前イベントで言っていましたよ(笑)。

成田・大内:おお~!

やつい:天馬さんのフェスもしっかりストーリーがありますもんね。テーマもあるし。

天馬:やっぱり僕が影響を受けてきたミュージシャンを中心に集めて……どうしてもそういう風になるんですよね、自分でやることになると。

それでムーンライダーズとか、大槻さん、筋肉少女帯に出てもらったりして。

でも、ムーンライダーズが好きな人と筋少が好きな人たちはそれぞれいますけど、これが同時にステージに立つことっていうのは、両方30年くらい活動していてほとんどなかったんじゃないかなって思うんですよね。

そういう出会いみたいな場所にしたいというのもあるんです。アイドルに偏見を持っている人たちが例えば生ハムと焼うどんさんを観て「いいじゃん」って思ってもらうとか、そういうものを知るきっかけになればと思っています。

成田君は「ちょっと力が不足したジョン・レノン」

―「鬱フェス」は“闇を抱えたアーティストかどうか”というのが出演者の基準として始めたそうですが、それで言うと成田さんは?

天馬:いや、もう完全に闇を抱えてると思う。

やつい:明らかに抱えてます。サイコ野郎ですから(笑)。

天馬:最初はそういうコンセプトはありましたけど、まあ闇と言っても広くなってきちゃいましたからね。

やつい:成田君は、「ちょっと力が不足したジョン・レノン」というかね。

一同:ははははは!

天馬:世界を変えたい、という気持ちはあるんですよね(笑)。

やつい:“イマジン力”はすごいから。ビートルズくらいの才能があればね…世界を変えている可能性ありますよね。それくらいのイマジン力はあるから(笑)。

でも、全然そういうことじゃなかったはずなのに、青森に日本中の人たちを集めているのは、どう考えても地元のテレビ局の夏祭りよりも、「夏の魔物」の方が上じゃないですか。

あれは東京から有名な人を呼ぶから青森に住んでいる人たちは喜ぶかもしれないけど、東京からは観に行かないもんね。

でも、「夏の魔物」は日本中の人が知っているし下手したら沖縄から飛んできて青森で観ているわけじゃないですか。それは素晴らしいと思うんですよ、外貨の稼ぎ方が。外貨じゃないか(笑)。

天馬:でも、本当にまちおこしができる人だなって思いますよ。

やつい:東京から青森にたくさんの人が行くなんて、「ねぷた祭り」と「夏の魔物」くらいじゃないの?

成田:そう言ってもらえると嬉しいです。でも、去年とかホテルが全部埋まったりしてたみたいで…最近では、うちのお客さんの9割が県外から来てくれています。

天馬:ですよね、だって青森ではたぶんクラスで1人しか聴いてないんだもん、この音楽を。しかもネットでゲリラ的に宣伝しているわけですよね。

「夏の魔物」の日は、自分たちが出ていなくても、TLがずっと「夏の魔物」なんですよ。

「ああ、今ベルハーのお客さんが何か燃やしてるんだ」みたいなことがTLでリアルタイムで伝わってくるという。その影響力やすごいなと思いますね。

―今年の「夏の魔物」は10月1日に開催されますが、その前にフェスのホスト・ユニットの『夏の魔物』が9月7日にメジャー1stアルバムを出します。

天馬:まだ1stアルバムだったんだ、と思ったんですけど、最初は夏の魔物って名前じゃなかったんでしたっけ?

成田:そうです。『夏の魔物』という名前にしたのは、「夏の魔物」という記号とか象徴とかになるものを作りたいというか。

やつい:ブランドにしたいっていうことだよね。

成田:はい、そうです。それが前は消極的だったんですけど、もうそういうのもなしでちゃんとやって行こうと思ったんです。

天馬:成田君が、「夏の魔物」という名前をこのユニットで背負っても良い、という勇気が出たんじゃないですか?

成田:ああ、そうですね。俺がアーバンギャルドとリキッドで対バンしたときはものすごくしょうもなくて。ねえ、大内さん?

大内:そうだね(笑)。めちゃくちゃでしたね。

成田:メンバーも全員抜けて、サポートの人になって俺と大内さんだけいて。何か表現はしたいんですけど、その方法がわからなくて。あの日も、アーバンギャルド、0.8秒と衝撃。、でんぱ組.incBiSっていう錚々たるメンツなのに、俺らだけしょうもなくて。

大内:しかも僕ら主催なのにトリじゃなく、真ん中くらいの出番で。トリをやる自信もないし、という。

成田:ライヴのやり方もわからなくて、覚えているのは前日に2人でロード・ウォリアーズが付けている棘がある甲冑、ラグビーのプロテクターなんですけど、それを作っていて(笑)。

大内:入場用のコスチュームを必死で作っていたんです。

やつい:もう、コントだよね。でもわかるよ、ガワを作っちゃうんだよね。

自分もライヴをやるときに最初にやったのはチラシを作ることだったり、Tシャツ作りたいなということが先にあったりしたから。本当はコントを作らないといけないのに。

本当は面白いコントを作ればそれは後でいくらでも出来ることなのに。

天馬:確かに、ガワをやりたくなっちゃうんですよね。僕も最初はミュージック・ビデオを作りたくてバンドを始めたようなところもあるので。

成田:でも、音楽をやっている人って普通、衣装とか曲とかライヴとかリンクしているじゃないですか?そのやり方が当時わからなかったんですよ。

でも今はやっとメンバーにも巡り合えて、作品とライヴをやっと表現できるようになったというか。

天馬:たぶん、やってることがわかりやすい人は、周りの人が「こういうものが作りたいんでしょ?」って例えば絵が得意な友だちがジャケットを描いてくれたりということができるんだけど、成田君のやりたいことっていうのが、周りの友だちに言ってもよく伝わらなかったんじゃないかな?

それがフェスをやったりとかユニットの『夏の魔物』が色々形を変えていくことによって、「あ、成田君のカラーってこういうことなの?」っていうのがだんだんついてきたっていうことじゃないですか?

やつい:最初、音楽辞めてプロレスラーになったと思ってましたもん。変わってんなあって。

成田:他の人のライヴを観に行ったりすると、「成田君、プロレス始めたんでしょ?」とか言われましたからね。

天馬:プロレスっていうのは、“精神性におけるプロレス”っていうことですよね?

成田:そうです、そうです。

天馬:ロックとアイドルは音楽ジャンルだから良いんですけど、プロレスって音楽ジャンルじゃないですもんね。

だから、精神性といってもわからない人にはわからないし、それを伝えていかなければいけなかったんでしょうね。

成田:結局、アティテュードとしてのロックの概念をわかっているメンバーだけが今は残って揃った感じなんですよ。

やつい:むちゃくちゃだもんね、とにかく演奏する人がいないし。

大内:最初は演奏する人もいたし、むちゃくちゃなところから始まって、あれから4年経ってようやく音楽のグループとして1stアルバムを作ることができました。

やつい:でも、その段階で人に見てもらえてたって相当なことですよ。だいたいそういうのって見てもらってないところでやってることだから。

そこで見てもらえているってことは相当な仕掛け人な気がするけどね。

~ここでたまたま通りかかったSuGの武瑠が登場~

武瑠:どうも、お疲れさまです。

成田・大内:ああ~お疲れさまです!

天馬:お久しぶりです!

武瑠:はじめまして、SuGというバンドのボーカルの武瑠と申します。

やつい:やついです、よろしくお願いします。

天馬:今年、「夏の魔物」出るんですよね?

成田:今年はよろしくお願いします。

大内:ここにいる人は全員出演しますね。

天馬:ちょうど今、「夏の魔物」の対談ですから何か言っておいた方が良いんじゃないですか(笑)。

武瑠:「夏の魔物」に関しては、とりあえずせめて午後が良いです(笑)。

一同:ははははは!

やつい:朝6時半キツいですからね。

武瑠:え、6時半の人もいるんですか!?

大内:6時半オープンですね。

武瑠:(2015年のTTを見ながら)すごい時間割してるなあ、これ(笑)。101日はよろしくお願いします。それでは失礼します!

やつい:「夏の魔物」でお会いしましょう!

一同:おつかれさまです!

やつい:(夏の魔物1stアルバム参加ミュージシャンのクレジットを見ながら)すごいメンツだよね、しかし。でも成田君はめっちゃ細かいってみんな言ってたよ? 作曲を頼んでくるわりに細かいって。

成田:そうですね、なんでも良いっていうわけではないので。

天馬:例えば大槻さんだったら、「この曲のこのBメロみたいにしてくれ」って、すごい細かいオーダーだって聞きました。

やつい:だからもう、佐村河内さんの指示書みたいになってるんだ。

一同:ははははは!

成田:いやいやいや(笑)。