さて、そんな堺雅人が、NHKの『塚原卜伝』を挟んで、4度目の連ドラ主演をしているのが『リーガル・ハイ』だ。脚本は、映画『ALWAYS三丁目の夕日』や『ゴンゾウ 伝説の刑事』などの古沢良太。この脚本が抜群に面白いことは言うまでもない。ただ、脚本に頼るだけでなく、演出も演者も全力で仕事をしている感じがして、このドラマは非常に好印象なのだ。テイストはコメディだが、これだけ迫力があるコメディも珍しい。

その迫力を支えているのが、堺雅人が演じている主人公・古美門だ。偏屈で、毒舌で、皮肉屋で、気分屋の古美門を、堺雅人はスーパー早口のエキセントリックなキャラクターとして演じている。早口は堺雅人のアイディアらしいが、その口調は古美門のキャラクターだけでなく、作品全体の勢いにも大きく貢献していると思う。とくに、第9話で依頼主となる村人たちの前でブチかました長ゼリフの演説は、もう圧巻だった。ドラマ史に残る名シーンと言えるかもしれない。このドラマのキャッチコピーに「闘うことを忘れてしまったすべての人たちに贈る」というのがあるのだが、まさにそれをストレートに表現した見事なシーンだった。

ストーリーとしては、現在は古美門の事務所で働いている正義感丸出しの女性弁護士・黛真知子(新垣結衣)が、裁判では無敗の古美門をいつか倒すという大きな流れがあるので、最後はそちらの方向へ向かうと思う。ただ、性格は最悪でも弁護士の腕は一流の古美門なので、単純な勝ち負けとしては描かれないような気もする。そこをどう描くか、かなり楽しみだ。

黛がいつか古美門を倒すという流れは、オープニングテーマの映像にもイメージとして描かれているのだが、これもなかなかオシャレな作りになっている。巨大化した黛が、同じく巨大化した古美門に飛び蹴りを食らわすというもので、それが毎回、少しずつ進展しているのだ。第9話が終わった時点では、最初の飛び蹴りが古美門にかわされるという場面まで来ている。これが最後にどうなるかにも注目だ。

ちなみに、オープニングテーマ「えれぴょん」を歌っているのは、元AKB48の小野恵令奈。疾走感のある曲がドラマの雰囲気にもあっているので、これも聞き逃さずに、最終回まで堺雅人の超演技を堪能して欲しい。

たなか・まこと  フリーライター。ドラマ好き。某情報誌で、約10年間ドラマのコラムを連載していた。ドラマに関しては、『あぶない刑事20年SCRAPBOOK(日本テレビ)』『筒井康隆の仕事大研究(洋泉社)』などでも執筆している。一番好きなドラマは、山田太一の『男たちの旅路』。