大蔵卿局役の峯村リエ

 NHKの大河ドラマ「真田丸」で、浅井家のころから茶々(竹内結子)の乳母を務め、大坂城でも茶々や豊臣秀頼(中川大志)を支えた大蔵卿局を演じている峯村リエ。大切な人を守りたいがゆえの行動が、牢人たちの自由な発想をはねつける結果となった大蔵卿局のじくじたる思いを語る。

-大河ドラマは初めてですか。

 初めてです。三谷(幸喜)さんが同じ事務所なので、どこかで1話ぐらい出してくれないかなと思っていたのですが、背も高しい無理だろうなと思っていたら、オファーがありました(笑)。所作も全く分からなかったので、出演者の中で一番最初に所作の指導をしていただきました。それぐらいプレッシャーと舞い上がりがすごかったです。

-三谷さんからの要望は?

 ヒラリー・クリントン、土井たか子さん、三原じゅん子さん、井脇ノブ子さん、それと三谷さんと私が今所属している事務所の社長、この5人を足して5で割ったような感じだと言われました(笑)。人に対する話し方が少し強い感じの女性ということではないでしょうか。

-何か反応はありましたか。

 三谷さんから「大蔵卿局がすごく良くなってきていますね。うち(三谷)の母から電話があって『あの女が一番悪い』と言っていた。大成功ですね」ってメールがありました(笑)。うれしかったです。間違ってなかったんだなと安心しました。

-ヒール(悪役)ですね。

 茶々さまと秀頼さまをお守りするが故に、そうなってしまうというところを大切にしています。そういう理由がないと、ただの嫌なきつい人になってしまいますから。

-ヒールを演じるのは役者にとっては喜びでもありますが。

 監督(演出)からSNSは見ない方がいいと言われていたんですが、この間見たら案の定、大蔵卿に対する書き込みがすごくてちょっとへこみました(笑)。「そう思われているなら大正解だ」と友人に言われて、その通りだと思うんですけど、やっぱり嫌われるのはちょっとね…。

-大蔵卿に権力欲はあったのでしょうか。

 大蔵卿はとても聡明な女性だとも言われていて、それなら権力欲もあったと思いますけれど、今回の大蔵卿局は「あっ間違えちゃった」とか「こういう言い方しなければ良かった」とか、ある意味ちょっと魅力的な浅はかさもあるので、権力欲があったかどうかはよく分からないです。

-強くなることで意見も通りやすくなる、その結果としての権力ということですか。

 そちらの方が強いですね。

-大蔵卿にとって、茶々や秀頼はどういう存在なのでしょう。

 幼少時からいろいろ見てきた茶々さまには「もう怖い思いはしなくていいのよ」と思わせたいでしょうし、茶々さまが守っている秀頼さまは、私の宝物が生んだ宝物みたいなもので、さらに愛情深い感じです。豊臣の家臣が次々といなくなって、私が守らなければという思いがすごく強くなっていったんだと思います。牢人を信じないのも、彼らが入ってくることによって守りが浅くなり、私たちの大坂城が取られてしまうという恐怖感があったのではないでしょうか。

-真田幸村(堺雅人)に対しては?

 茶々さまがとても信頼しているから、ジェラシーから敵対しているんじゃないでしょうか。

-舞台では「抜目のない未亡人」で三谷脚本を経験していますが、ドラマでは初めてですね。

 微妙な“間”で本当に面白くなるせりふが多いです。緊張します。でも、その微妙な“間”がはまるとすごく面白い。

-所属する劇団「ナイロン100℃」を率いるケラリーノ・サンドロヴィッチさんの芝居との共通点は?

 無表情でコミカルなことを言う、みたいな演技でしょうか。今回はそれが役立っています。

-大坂方の人々に対しては、どんな思いを抱いていますか。

 今回は大蔵卿が負けに導いているような感じになってしまっているので、申し訳ないという気持ちがあります(笑)。秀頼や茶々や大蔵卿らが自害したとされている場所にある殉死の碑やほこらに「こういう感じで演じさせていただきました」と報告しに行こうと思っています。