商売でバンドをやっているわけではないんです。
――今年は2月にシングル『CONTRAST』、3月にミニアルバム『SENSE』そして11月に『Snowman』と、フルアルバムをリリースしていないですね。リリースに伴うツアーみたいなこともなかった。
海:そういえば! やってないっすねえ? 最初は、『SENSE』をフルかミニにするか意見が分かれたんです。大人たちと我々子どもたち(笑)の間で。
俺ら的にはひとりずつ作った曲と、皆で作った曲を入れたミニアルバムを作りたくて。コンセプトや雰囲気はどうでもよくて、自分たちのカラーがはっきり出た曲と、自分たち全員のカラーがしっかり混ざった曲が一曲のミニアルバムがあった上で、今年のライブをやりたかった。
クソバカみたいに長いツアーやってたので、リリースツアーをやる暇もなかったけど、短くても『SENSE』を掲げたツアーをやるか? という案もあったんですけど、なんか俺の中でピンとこなくて。
基本的にはフルアルバムを作らないとリリースツアーやらないんですよ。
――なるほど。
海:ウチ、あんまり普通のことをやらないんですよね。
バンドの初期は、普通のことをしたがらなかったりとか、周りのバンドをみて「皆あれをやってるからウチはやらない」みたいな計算もあったんですけど。いつからか、普通じゃない感覚が普通になってしまって(苦笑)。
今はすげーナチュラルに今年アルバム出してなかったですし、リリースツアーもやってないけど、それに対して「まずかったね」っていう雰囲気もないし。つまり皆頭が悪い……。
まあでも、次リリースするのはフルアルバムだと思うので。そういうツアーがあるとは思います。
――来年は10周年ですしね。さっき「子どもたち」とおっしゃってましたが、バンド的には中堅とされる位置に来ていると思います。
海:それはすっげー言われるんで、自覚はするようにしています。自分たちでは若手のつもりなんですけど。
持ち上げられるときは「お前たちがシーンを引っ張っていかないと」と言われるし、叱られるときは「もう若手じゃねーんだから」って言われるし(笑)。
――上の世代もいるし、下の世代も出てきているのが中堅ですよね。
海:自分たちより若いバンドは、ここ最近活性化してるように思うんです。もちろん昔からバンドはいたけど、解散するのが早かったりで、ようやく表立って出てきたなと感じます。そんな中で、力をつけてしっかりしたものを世の中に出している人たちがここ1、2年で増えたなと。
――他のバンドを定期的にチェックしていたりするんですか?
海:というよりは、知り合った人、面白かった人の音源は必ず聴くようにしてるんですよね。CD屋に行って店員さんに「このバンドのオススメどれですか?」って聞いて買ったり。
それを聴いて素直に「かっこいいな」と思えるバンドが増えたというか、その反面うかうかしてらんねえなと思うし。
――逆に上の世代のバンドに対しては、何か感じることはありますか?
海:いやー強いっすよ!
――上の世代はすごくたくさんいますし、新しいバンドも出てくるし、今のシーンで、10年目くらいの中堅の立場ってすごく大変だと思うんです。
海:俺らの世代ってあんまり「ちょっと上」がいないんですよね。MERRYやMUCCみたいな、「はるか上」なんですよね。「結構遠いな」みたいに感じますよね。
――そこの差は感じますか?
海:正直、時代だとかの要因はあるんですけど、そうは言っても売れてる人たちは売れてるし。「CDを買う人が減ってる」とか「音楽を聴く人も減ってる」とかいう話もあるじゃないですか。「音楽ってお金を出して聴くものなの?」みたいな人もいるわけで。
正直、レコード会社も儲からないところにはお金を使ってくれないこともあって、CDの装丁もどんどんシンプルになっていきますし。
昔は意味すごく手のかかったCDのジャケットや装丁もたくさんあったじゃないですか。箔押しの箱に入っててその中にフィルムが入ってて……、箱だけでいくらかかるの? みたいな(笑)。
そういうのは減ってるじゃないですか。CD屋に行っても、大手レコード会社のランキング常連の人たちしか凝ったジャケットCDは出してなくて。
中には、すごく失礼な言い方をすると「このジャケット手抜きじゃねえの?」みたいなこともあって。ぺらぺらの歌詞カードには文字通り歌詞とクレジットあるだけ、みたいな。
たしかにこれだったら俺もCDいらないな、配信でいいやと感じたんです。
でも俺はそっち側ではない、CDに愛着のある人間なので、自分たちのCDもジャケットやアートワーク、CDの中身の音楽だけじゃなくて、所有欲を満たす、手元に持っていたくなるものにできれば、お客さんにも手に取ってもらえるかなと。
それをやっていくうちに、「他と違うね、凝ってるね」とショップの店員さんにも言われるようになったりして。
「ヴィジュアル系」っていうんだから、見た目にも時間かけないとしょうがないだろっていう。
――そこにはこだわりがあるのですね。
海:極論をいってしまえば、商売でバンドをやっているわけではないんです。商売でやっているのであればコストは考えなければならないけど、一番根本にあるのは、「作りたいものを作る」じゃないですか。
俺の作りたいものは「すごく売れるものを作る」ではなくて「俺たちがいいなと思うもの」の集合体を作りたい。
その話をすると、「考え方がしっかりしてる」って言われることもあれば、「考え方が古いね」と言われることもあります。
後者のように思う人はたしかにいる。でも、そういう考えだと受け取り手もわかっちゃうというか、純粋に聴いてくれてる人たちにも伝わると思うから。