NHKの大河ファンタジー「精霊の守り人 悲しき破壊神」が1月21日から放送される。前シリーズに引き続き先住民ヤクーの血を引く新ヨゴ国の薬草師タンダを演じた東出昌大が、前作から4年後を描く新シリーズの魅力や新登場のキャラクターとのエピソード、綾瀬はるか演じる幼なじみのバルサに対する秘めた思いなどを語った。
このドラマは世界中で愛される日本発のファンタジー大作「精霊の守り人」シリーズを4K実写ドラマとして3年間にわたって放送している。前作(2016年3-4月に放送)から4年後を描く新シリーズでは、お尋ね者となった主人公の女用心棒バルサと新ヨゴ国の皇太子になったチャグムの別れ別れとなった2人のそれぞれの冒険が再び始まる。
──まず、前作から続いてタンダ役で新シリーズに出演される意気込みをお聞きします。
登場人物も増え、世界観も広がりを増したのが新しいシリーズです。だからといってタンダがすごく変わったということはないのですが、今回はまた問題が噴出してさまざまなことが起こる。その中で困難にしっかり立ち向かえる人物でありたいなと思いました。どんどんスケールも大きくなって課題も多いので、その中でタンダの変わらない強さみたいなものが出せればと思っています。
──前シリーズからほぼ丸1年空いての新シリーズですが、いざ現場に戻ると懐かしさがあるのでしょうか。それとも新しい作品という心境なのでしょうか。
懐かしい感じはありました。撮影の空き期間より物語の方が年数が経過していて、あれから4年たっています。バルサやタンダはどうあるべきかを綾瀬さんと話しながらやりました。でも作品がファンタジーなので、例えばタンダの口の下にある入れ墨の本数が増えているとかはない(笑)。ビジュアルの変更もないし、タンダはたぶん自分で髪も切っているだろうし…。ファンタジーだから経年変化ばかりを考えず、前シリーズから引き続いている人はみんな、キャラクターの魅力はどこかを考えてやっていければと思っていました。
──物語では4年が経過しているとのことですが、タンダの変化はどう演じましたか。
タンダは人を和ませるためにちょっと外れたことを言ったり明るく振る舞ったり、すごく人を見ることができるし、傷ついた人などの心の機微に気がつける人。天然でやっているわけじゃないんです。バルサがテンパって思考を乱されているときも『大丈夫だ』と言えてしまうものすごく分厚い人物で、もし現代にいたら怖いくらいだと思います。それがタンダの成長だし魅力だと思って、意識してこのシリーズに入りました。
──バルサとの再会のシーンは視聴者にとっても印象的なものになると思いますが、どんな思いをお持ちですか。
バルサが行方をくらませて、ドラマでは4年ぶりに会います。タンダはものすごくうれしかったと思う。魂の伴侶だと思っていたバルサと再会して、また仲良く旅しようとするのは、バルサのことを分かっているからなんですよね。一言も当たったりしないし、責めたり、『信じられない、俺はものすごく裏切られた気分になった』などと言うわけでもなく…(笑)。これだけ好きなので、4年間毎日バルサのことを考えて1日も忘れたことはないんじゃないかと思って、久々にバルサに会いました。撮影ではバルサを見た瞬間にアドレナリンがバッと出ちゃって…、きれいなシーンというより嵐のごとく過ぎ去ったようなシーンですが(笑)。
──新シリーズからの登場となるシハナ役の真木よう子さん、シハナの父・スファル役の柄本明さんと共演してみて印象に残ったことはありますか。
柄本さんとはお芝居の寸前までフランクにお話ししていました。真木さんはドラマでの共演が2回目なのですが、2回とも僕がひざまづいてるところで顔を蹴られるシーンがあるんです(笑)。台本を一読したときに、なんでだろうと思って、ちょっと驚きました。でも台本にお2人の名前が書いてあったときにはぴったりだと思いましたし、それ以前に後輩としてお2人と現場を共にできるのは楽しみだという思いがありましたね。
──東出さんの感じるタンダの一番の魅力はどこでしょうか。
芯の強さだと思います。バルサには男女の仲という意味でも、もちろんソウルメイトという意味でもひかれている部分がある。現代の若者だったらすぐ色恋に持っていきたがるところだと思うけど、バルサの幸せを思ってぐっとこらえる。あれから4年、もっとずっとそれ以前から我慢しているわけですし…。現代の草食系とかヘタレとかじゃなくて、彼の信念が、心が強いからそういう人となりになっているという部分が魅力だと思います。
──東出さん自身がタンダに共感する部分、原作の上橋菜穂子先生と話して印象に残っているところはありますか。
人間的な強さや森の中で1人で生きているところ、人への思いやりは尊敬する部分が大きい。『あの女の人のほうが強いんだね』と言われて、『まあその通りなんだけど』とちょっと苦笑しちゃうみたいな、正直なところ僕もそうありたいと思っています。上橋先生とは新シリーズの顔合わせのときにお会いして、『あたしの頭の中から出てきたタンダだった』とおっしゃってくださったのがものすごくうれしかったです。
──バルサを4年間待つことができたタンダはすごいと思いますが、東出さんなら待てますか。また、タンダはバルサのどこが好きなのだと思いますか。
それが魅力でありタンダの世界観の現れでもあると思いますが、現代の東京とこの世界では時間の流れ方も人との出会いの数も違いますよね。4年待てると断言してしまったらそれこそファンタジーだなと思います(笑)。タンダはバルサの時折見せる弱さだったり、思い上がりかもしれないけど『こいつには俺しかいない』とちょいちょい思っていると思います(笑)。真剣に悩んで自分の身を挺するバルサは尊敬に値しますし、彼女をずっとそばで見てきて嫌いになるところはないというくらい立派な人間。タンダの目にはバルサの全部が魅力的に映るんだと思います。
<プロフィール>
東出昌大(ひがしで・まさひろ)
1988年生まれ、埼玉県出身。高校時代にモデルとしてデビュー。2012年、『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビュー。同作で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。NHK大河ドラマ「花燃ゆ」、映画『デスノート Light up the NEW world』など多数の作品に出演。8月26日公開の映画『関ヶ原』で小早川秀秋を演じる。