その出勤は本当に必要か?(品川駅、4月17日午前7時45分撮影)

世界中に広がった新型コロナウイルス感染症。感染拡大を止めるために政府は4月7日、7都府県に非常事態を宣言、16日に対象地域を全都道府県へと広げた。7日の記者会見で安倍首相は国民に対し、「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減すること」を掲げ、仕事も極力出社せずに継続するなどで感染者減少への協力を求めた。

確かに通勤時間帯、電車の「満員状態」が目に見えて改善され、毎朝オフィスに向かう人たちの数も減ったという実感はある。しかし、非常事態宣言を全国に拡大した最初の朝、17日の出勤風景を取材しても、まだまだ削減の余地があるように見えた。おなじみになった品川駅港南口のコンコースは、普段よりも少ないとはいえ、依然として多くの人が足早に出勤していた。丸の内では人の波はだいぶ減ったが、それでも会社に向かう人たちが絶えることはなかった。

調査会社の日本リサーチセンターと英YouGovによるグローバル調査によると、新型コロナウイルスに対する予防策として「通勤・通学」を避けている人たちの率が主要26カ国中、日本は18%で最低という結果になった。緊急事態宣言後の調査でも、だ。

直近のデータで「通勤・通学」を避けている人たちが最も多かったのはマレーシアで68%、終息を迎えつつある中国が57%、イタリア、スペインがともに49%、アメリカが25%という結果だった。結果が必ずしも感染症による被害の大きさと比例しているわけではないが、日本の18%という結果は、とにかく会社や学校に「行く」ということを重視している人たちが依然として多いことを物語っている。

医療関係者を筆頭に、生活に不可欠な業務や社会を維持するために必要なサービスを生業とする人々は、出社が必須の場合が多い。こうした人たちによって、私たちは生かされている。一方、出社や移動が必ずしも必要ない仕事に就く人たちでも、出社し続けている人たちが少なからず存在している。しかし、そうした行動は今や避けるべき行動だ。

コロナ禍を経験した今、会社はテレワークの有効性に目覚め、オフィスのスペースを最小限に絞ることになるだろう。発熱を押して出社したり、台風上陸に備えてオフィスに寝泊まりしたりといった行動は、もはやマイナスの評価にしかならなくなる。ポストコロナで社会は激変しそうだ。

少なくとも、事務所に長時間滞在することで評価を期待する「社畜」に甘んじていては生きていけない時代になった、と言えるだろう。日本でも、人と会社の新しい関係性構築が求められている。(BCN・道越一郎)