神秘的な伝説が息づく南の島を舞台に、愛する島の人々を救うための旅に出た少女の冒険を描くディズニー・アニメーション最新作『モアナと伝説の海』が3月10日から公開される。本作の日本語吹替版で、主人公モアナの声を務めた新人の屋比久知奈(やびく・ともな)と、その相棒で伝説の英雄マウイの声を務めた歌舞伎俳優の尾上松也がインタビューに応じ、共に声優初挑戦の感想を語った。
-オファーが来た時の心境を教えてください。
松也 随分前からディズニー・アニメーションの声優をやりたいと言い続けていたので、収録前は僕の中で夢がかなった気持ちでした。
-アフレコはどんな感じでしたか。
松也 収録前はどんなに楽しいだろうと想像していましたが、いざやってみると細かい作業が必要だったり、順番通りに録るわけではなかったりと、不慣れな部分もあったので、前半は、終わってほっとした部分と、もう一度やり直させてくれないかなという気持ちもありました。僕はほかの方の声がない状態で(アフレコを)行っていたので孤独でした。屋比久さんの声を聞いたのは後日録り直しをした時で、スタッフの方に「収録したものがあるけど聞きますか?」と言われて、聞いた時に「もうこれでモアナは大丈夫だ」と確信しました。
屋比久 私も最初はワクワクしつつ不安も大きかったので、収録前は不安70パーセント、楽しさ30パーセントの気持ちでした。やってみると難しくて、せりふを聞き直したら、思っていた通りに聞こえず、悔しい思いもたくさんありました。でも、監督やスタッフの方々が一言一言丁寧に指導してくださったので、徐々に楽しむ余裕ができてきました。最初はついていくのがやっとでしたけど、次第に、楽しみつつ、学びながら収録ができるようになったので、貴重な体験だったと思います。
-屋比久さんは、ディズニー・アニメーションのヒロインとしては、過去最大規模のオーディションの中から抜てきされたわけですが、いかがでしたか。
屋比久 私も後から(過去最大規模だったと)ニュースで知って、「どうしよう」と驚きました。そういう意味では本当に光栄ですし、これが活動スタートの作品なので、幸せで恵まれているなと思います。
松也 活動のスタートがこの映画だもんね。うらやましい。
屋比久 ありがとうございます。
-屋比久さんはこれまでもミュージカルやダンスを学んできたそうですが、今後の目標は?
屋比久 ミュージカルの舞台に立つことです。それで東京に出てくる決意をしました。歌も演技もダンスもまだまだ勉強しないと、という思いでワクワクしていますし、やってやるぞという気持ちです。
-そういう意味では、主題歌も担当された本作はピッタリでしたね。
屋比久 はい、すごくうれしかったです。
-市川海老蔵さんや中村獅童さんなど、歌舞伎俳優の方が声優をすることも増えてきていますが、松也さんは今回どのような思いで臨まれましたか。
松也 歌舞伎以外にもいろいろな場面で、チャレンジできるのであればチャレンジして、歌舞伎に興味がない方もこの映画を見て「この声優誰だろう?」と調べて興味を持っていただけたらいいですね。いろんな分野で活躍することが歌舞伎への恩返しになると思いながらやらせていただいているところもあります。
-お二人とも劇中で歌も披露していますが、どんな気持ちを歌に込めましたか。
松也 僕の「俺のおかげさ」はとにかく陽気な楽曲で、マウイの、鼻につくけど憎めない感じを意識して、楽しみながらやっていました。リテイクもそれほどなくすんなりとできました。
屋比久 私の「どこまでも ~How Far I’ll Go~」は主題歌としてモアナの思いがすべて詰まっている1曲なので、歌としてというよりも、その言葉や気持ちが伝わるといいなと思いました。英語から日本語に翻訳された時点で、(歌詞が)どうしても少なくなってしまうけど、その中に含まれている思いは減らしたくないと思ったので、一言一言を丁寧に歌に乗せようと意識しました。
(取材・文・写真/中村好伸)
『モアナと伝説の海』
3月10日(金)全国ロードショー
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン