――そして、続編にあたるニューアルバムタイトル『惡道に死す』が4月4日に発売されました。

ぶう:それはまたアレなんですけど、今回は4th(フォース)アルバムなんで……。

――『スター・ウォーズ』の「シス」?

ミド:ダジャレです!

ぶう:ちなみに次のアルバムは「ゴス」を提案したら却下されました。

――そこダジャレにしちゃったんですか。

ぶう:はい、だからアルバムのタイトル考えてから歌詞とかも色々考えました。

――完全に後付けなのですか。

えんそく・ミド(B)

ぶう:そうですよ、いつもだいたい後付けです。だってずっと同じことを歌ってるんで、外枠は自由でいいというか。逆に外枠が変わってくれないと、中身が同じだということがバレる。

――ぶうさんとしては、ずっと同じことを歌ってるという自覚があると。

ぶう:多分ボクらが衣装を脱ぎ捨てて、普通の私服で歌うバンドだったら、こんなに何枚もCD出せないですよ。「全部一緒やん」って。「今回はフォースだからシスだね、死だね」みたいな外枠を考えて変えるのが楽しいんです。

手塚治虫作品のスターシステムみたいに、設定は違うけどキャラクターは同じみたいな。外枠はなんでもいいという自由さはありますね。

――今回のアルバムは「死」をテーマにしているとのことですが、前作にあたる『惡童のススメ』は牧歌的なSEで始まってました。今回は1曲目からシリアスというか……。

ぶう:わりとダークに始まって、めっちゃ疲れるっていう。前回はJoeさんが入って初めてのフルアルバム。2度目の「ファーストアルバム」というコンセプトだったので、入り口になるようなアルバムだった。今回は「シス」だし続編なので。もちろん誰が聴いてもいいものは作っていますけど。

と、同時に伏線回収というか、知ってる人はより面白いものになっていると思います。

――なるほど。

えんそく・クラオカユウスケ(G)

ぶう:もともとワンマンツアーで1日2本やることは決まっていて、つまり有料ライブの方には必ずこのアルバムの曲が確実に入ることになるじゃないですか。だからライブ向けに暴れられそうな曲を、ということは念頭にありました。

それが結果「死」というテーマに相応しい、黒い曲になりました。だから聴くのに覚悟がいるというか、イージーリスニングに向かない。

クラオカ:前作よりハードコアになったかもしれないですね。それが最後の方になると底抜けに明るくなっていくんですよ。だから噛めば噛むほど味が出るかもしれない。それに、1曲目から再生したときにサイレンが鳴ってるんですよ。

ぶう:そのベタさもいいですよね。ついにえんそくにもサイレンが。

クラオカ:今まで出し惜しんできたのが。

ぶう:出し惜しんでたの? それは知らなかった!

ちなみにこのアルバムは12曲収録ですが、7月に「13曲目」にあたるシングル『金曜日のチェンソー/天獄への十三階段』が出ます。やっぱり13で終わりたいじゃないですか。

「12」はひとつのまとまりですけど、「13」って忌み数、死の数字ぽい。なんか最近ずっとスピリチュアルなこと言ってんですよね。

えんそく・Joe(G)

だからえんそくは古臭くてもいい。(ぶう)

――スピリチュアルというわけではないんですけど、ぶうさんの歌詞って、ずっと「世界の終末」「惡の秘密結社」が出て来る一方で『合唱リーダー深沢』のように、クラス内での出来事みたいな個人的なものがあって、それが全部並行して描かれるじゃないですか。

ぶう:ボクの中2の頃から変わっていない部分を出すのがバンド(活動)だと思っているから、ボクらが中学生だった頃の「1999年がもうすぐ来る」という終末感と、日々がつまらなくて「なんか楽しいことないかな」と鬱屈した感じが相まって「あの時代特有の中2感」を構成していたと思うんですよね。

――「つまんない日常」と「世界の終わり」が直結してる。

ぶう:当時の感覚としては直結してましたけどね。オカルト番組もテレビでいっぱいやってたし、僕は中央線で生まれ育ったんで、小学校の遠足になると高尾山に行くわけです。矢追純一が高尾山でUFOカフェをやってたり。そんな環境のなかでUFOやオカルト、ノストラダムスの大予言を希望として捉えていたというか。

授業中にテロが起こる妄想、隕石が落ちてきて自分だけ生き残る妄想とか。今の子供たちもするんですかね? 皆やってたと思うんですよ、暇な授業中に。その妄想をする上で、ボクらの世代には「1999年終末」っていうのがあったと思うんです。

その頃の気持ちがずっと残っていて、滅亡や死を肯定的に、「チャンスだね」という風にとらえてる。これって突飛な思考ではないと思うんですよ。

――これは前作『惡童のススメ』収録の『1999年のブルース』の歌詞の中にも”「アンゴルモア」を待っていたら夏が終わってた”とありますけど「起こらなかった」わけじゃないですか。そして今は2017年ですよ。

ぶう:すごいですよね。つまり今10代~20代前半の子たち、その終末感は知らずに生きてることになるんですよね。だからこのボクの感覚を共有できるかどうかわからないけど、「世の中なんかひっくり返るようなおもしろいことがねえかなあ」と思ってる、そういう非日常に憧れる気持ちは脈々とと続いてるだろうし、皆持ってると思うんで、そこに訴えかけられたらいいなと思うし。

そういう終末感に対して嘘なく言える世代に生まれて良かった、そこを武器にしたい。