魔宮は王墓?
ところで、「魔宮」というのはニックネームのようなものです。
そもそも、どんな目的の建造物だったのでしょうね。
最近の研究では、マヤのピラミッドも、神殿を兼ねた王墓だったことが、分かってきました。
しかも神殿は、洞窟の上に築かれたそうですよ。
果たして魔宮も同じか、中に入って確かめましょう!
いえ、その前に!
入り口の梁、中央のモチーフは、マヤ文明の「太陽の石」(石に掘られた円形のマヤ暦)中央の太陽神のようですね。
同様のものが、ピラミッドの頂上や水飲み場にもあります。
ついでに、隠れミッキー・チェックも忘れずにネ。
洞窟発見
入り口から中に進んで行くと、広い空間が見えてきます。
足場の奥には、巨大な彫像と、下方に散らばる骸骨が目を引きますね。
しかも、下は水びたし。
どうやら魔宮は、セノーテ(地下の泉)、つまり洞窟の上に築かれたようです。
魔宮が建設された時代には、彫像の足元まで水があったかもしれません。
世界樹の根
空間には樹木の根が、たくさんぶら下がっています。
巨木になる、ヤシュチェ(セイバ)の木のようです。
マヤ文明においてヤシュチェは、天上界、地上界、地下界をつなぎ、四隅で世界を支えている、世界樹とされていました。
そのため、神殿を始めとした、神聖な場所に植えられました。
セノーテやヤシュチェから考えると、魔宮は神殿のようです。
すなわち、地上の神である、王の墓と考えられます。
地母神(ちもしん/じぼしん)登場
骸骨は、神に捧げられた、生贄のようですね。
天井の穴から、落とされたのでしょう。
足場の奥の、巨大な彫像は、生贄を捧げられた神でしょうか。
独特な姿は、コアトリクエ?
メキシコ・シティーの、国立人類学博物館に収蔵されている、コアトリクエ像にそっくりです。
コアトリクエ像と一致する特徴を、列記してみましょう。
猛禽類のような、足の鉤爪。
蛇がよじれ合って形づくられた、スカート。
ドクロや人の頭(顔の皮)をつないだ、首飾り。
首飾りに囲まれている、首から胸元に落ちたような顔(頭部)。
両手のそれぞれに支えられた、二匹の蛇。(オリジナルでは、二匹の蛇が頭部を形作っている。)
多くの一致点があります。
コアトリクエは、ウィツロポチトリ(太陽神で戦の神)の母であり、生と死(再生)の神、月と星の母、などとされています。
別名「蛇の淑女」「蛇のスカートをはく者」などとも呼ばれるのです。
更に!
ウィツロポチトリは、夜、ジャガーに変身します。
ジャガーの皮をかぶった顔のレリーフは、地下(夜)の母の神殿を守る、ウィツロポチトリかもしれません。
マヤ文明の神話によると、400人もの兄・姉が、母を殺そうと襲ってきたときに、ウィツロポチトリが母を守って一人で戦い、全滅させました。
地上の王の永遠の家としては、最適のセッティングです。