アジアが誇る大スター、ジャッキー・チェンとディン・シェン監督が3度目のタッグを組んだ『レイルロード・タイガー』が6月16日から公開される。ごく普通の男たちが、日本軍の物資輸送を阻止するため、橋の爆破計画に挑むという、鉄道を舞台にしたアクションコメディーだ。本作で憲兵隊長の山口を演じた池内博之が、映画やジャッキーに対する思いを語った。
-本作への出演のきっかけは? ジャッキー・チェンから直接オファーがあったといううわさも聞きましたが…。
今回はディン・シェン監督から直接オファーを頂きました。監督が、僕が出演した『イップ・マン 序章』(08)を見て、僕とジャッキーさんが対峙(たいじ)している絵が見たいと思ったそうです。
-その『イップ・マン 序章』のドニー・イェンに続いて、本作ではジャッキーとの共演です。伝説の香港アクションスターと共演した感想は?
最初にお話を頂いた時は、「えっ!」という感じで、びっくりしましたが、「本当に恵まれているなあ」と思いました。なかなか共演できないお二人ですから、共演できてとても良かったと思います。ジャッキーさんの映画は子どものころから見ていたので、憧れの人でもありましたし、その方と映画の中で共演できたことはとてもうれしかったです。
-では、ジャッキーと一緒にアクションをする時は緊張しましたか。
そうですね。しかも撮影の初日からいきなりアクションシーンだったので、とても緊張しました(笑)。距離感は? 殴りかかる強さは? などの加減が分からなかったのですが、ジャッキーさんが「もっと強くやっていいよ」と言ってくださったりしたので、気持ちが楽になり、伸び伸びとやらせていただきました。
-ジャッキーとの間で忘れられないエピソードはありますか。
今回は撮影現場がとても寒い所でしたし、ジャッキーさんご自身もアクションシーンで過去に大けがをされたりしていますので、アクションをする時に「本当に気をつけてやってくれ」と、周りにとても気を使っていました。その分、撮影には時間が掛かったのですが、そういう姿勢はとてもすてきだなと思いました。
-今回は事前にアクションの訓練はしたのですか。
ほとんどやっていません。現場に入るまで、どういうアクションをするのか分からなかったですし、なかなか具体的に教えてくれなかったので不安でした。とりあえず体づくりだけはしておこうという感じでした。
-今回の役柄は、コメディーの要素も強かったですが、心掛けたことは?
監督が現場で「このシーンはライトに演じてほしい」など、具体的におっしゃってくださいましたので、監督の指示に任せていました。ただ、大まかな流れはあるのですが、台本がないので、当日渡されて、通訳の方に訳していただきながらすぐに覚えて、という感じでした。せりふも「こんな感じで」と言われるだけで、自分で作っていかなければならなかったので責任重大でした(笑)。
-アジアの映画で日本人役を演じる際に意識していることはありますか。
所作などで「日本ではそういうのはあり得ない」ということを要求されることもあります。ハリウッド映画もそうですが、海外から見た妙な日本人像みたいなものがまだ残っている気がします。ただ、逆にそれが面白いからと、意図的に狙っているようなところもあると思います。そんな中で、僕が、日本人として、普段、普通にしていることを生かしていこうと思っています。
-この映画もそうでしたが、軍人役が多いですね。
不思議ですね。個人的には、軍人ではない、普通のいい人の役をやりたいなあと(笑)。いずれそういう時がくるとは思うので。それを楽しみにしています。
-最後に、この映画のみどころと観客へのメッセージを。
この映画は、激しいアクションの中に、コメディーの要素がちりばめられているところが面白いと思います。あとは、後半に行くに従ってどんどん加速していく、鉄道を舞台にしたアクションが見ものです。僕が演じた山口は、執念深くて傲慢(ごうまん)なところもありますが、かわいらしいところもあったりするので楽しんで見てください。後半のジャッキーさんとのアクションシーンにも注目してほしいです。
(取材・文/田中雄二)