『殺意 ストリップショウ』撮影:細野晋司

栗山民也×鈴木杏のタッグがお届けする、三好十郎の一人芝居が7月11日に開幕。 初日を終えた演出家・出演者がコメントを寄せた。

演出を務める栗山民也は、「私にはわからない」「これは、何だ!わからない」「だから私にはス ッカリわかって、何にも、わからない」。これは劇中のいくつかのセリ フなのですが、こういう言葉が深く頭から離れません。「わからない」 とはっきり言葉に出す、その何と素敵な瞬間か。 この作品は、わからないからこそ素直に実直に、何度も「問い」を 続ける一人の女の物語なのですが、敗戦後のどす黒く荒涼とした時代 のなかでも、そこに何の嘘もなければ騙しもありません。それだけで も、この女の叫びやささやきは、この罪深い嘘だらけの現在に強く響 くでしょう。パンデミック後の先の全く見えない今に、この物語のい ろんな断片が妙にダブって見えてくるのです。 不要不急のものとして文化芸術が話題になりましたが、人間や世界 の今を見つめるために、それがわたしたちを支えていることを証明したいと思います。

緑川美沙役を演じる鈴木 杏は、何よりも無事に初日の幕が開いた事と、劇場が再スタートできた事を とても嬉しく思います。このまま千秋楽まで無事に幕が上がり続ける 事をとにかく祈っています。 『殺意 ストリップショウ』は言葉によって色々な気持ちを引き出させる戯曲で、身と心を委ねていれば、自分の見た事のない景色を見せてもらえたり、抱いた事のない気持ちを抱かせてもらえる戯曲だと思い ます。後半は体力との勝負ですから、必死で戯曲にしがみついて走っている感じです。 今は私の役者人生の中でも、個人の人生の中でも、ターニングポイン トのひとつになるであろう、すごい時間を過ごしていると思います。 そういう時期に今いるんだろうなという気がするくらい、特別な時間 です。 残り13公演、毎日ちゃんと発見していけるように、毎日違っても良 いから、毎日新鮮に、鮮度も熱量も保っていけたら良いなと思っています。最後まで無事に駆け抜けられるように頑張ります。