真意をはかりかねて、社長の顔を用心深くグラス越しにガンミします。

「お金にならない仕事しろ。
二年はじり貧かもしんないけど。
いいか、長く生きたけりゃ
目の前の金に動かされんなよ」


ロマンチストではない、儲け主義で来た男が言うことだからこそ、ストレートにぶっささりました。
何かを悟った人間の言葉です。

「二年後に、あいつは元社員なんですよって
自慢できるようになれよ。
で、奢れ。俺にいっぱい奢ってくれえ~い」


そういって吠えながら伝票を取りました。
おっさん、輝いて見えました。
人間関係もお金も仕事も、目先のことだけ見てたらすすめない。
勇気のいることですが、勇気のタネは日々誰かの言葉に宿っている。
二年というリミットを胸に計画をカレンダーに書き込みました。

■翌日、社長から届いたメールには…

さて。
翌日、ごちそうさまメールを出すと、おっさんから以下のメールが。

『さて、「お金にならない仕事をしろ」とは
 アーチストに向けての言葉です。
 僕はお金にならない仕事はしてはいけません。
 なぜなら僕はビジネスマンだからです。
 キミは誰にも頼まれていないのに、
 小説を書いたり、ブログを書いたりするわけですか
 ら、立場は僕らとまったく違います。
 わかりますね?
 キミの進んでいる道はよく言えば、アーチストで、
 悪く言えば、プー太郎です。
 昔、僕は言いました、キミに必要なのは旦那だと。
 それはつまり、アーチスト、あるいはプー太郎を
 目指すべきキミへのはなむけの言葉だったわけ
   です。』

アーチストとプー太郎は紙一重新たな苦悶が勃発しました…。

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どんなときに仕事を辞めたくなる? [ https://ure.pia.co.jp/articles/-/7912 ]

文筆業。大阪府出身。日本大学芸術学部卒。趣味は町歩きと横丁さんぽ、全国の妖怪めぐり。著書に、エッセイ集「にんげんラブラブ交差点」、「愛される酔っぱらいになるための99の方法〜読みキャベ」(交通新聞社)、「東京★千円で酔える店」(メディアファクトリー)など。「散歩の達人」、「旅の手帖」、「東京人」で執筆。共同通信社連載「つぶやき酒場deep」を連載。