SuG・イベントの意義をまさに体現する、堂々たるエンタテインメント
トリはこのカオスな一夜のオーガナイザーでもあるSuGのステージです。ビジュアル系ファンを満足させるポイントを押さえつつも、初見/初聴の人にも届くポップネスを発揮して、趣きの異なるファンが混ざり合うフロアを爆発的に盛り上げていく5人。これができるだけでも相当すごいことですが、さらにすごいのは、自分のファンとそれ以外の人たち、そのどちらからも逸脱しかねないような遊びや実験を至る所に忍ばせている点です。
そしてやはりここでも「大衆性といびつさ」というキーワードが頭をよぎりました。ビジュアル系という揺るがないフォーマットに則りつつも、そこからはみ出す遊びや実験精神がバンドにさらなる奥行きと深みと得体のしれなさを生み、このバンドはまだまだ知られざる顔を隠し持っているんじゃないか、という期待を聴き手に抱かせる。これはバンドと して、かなり大きな武器だと思います。
自分は彼らのライブを見るのは初めてだったのですが(実はBABYMETALも初めて。初見じゃなかったのはたむらぱんだけでした)、このイベントの狙いを SuGのステージを見ながらようやく理解できた気がしました。この日出演した3組はバラバラなようで共通点があります。冒頭で書いた<女性シンガー/アイドル/ビジュアル系>というジャンルやカテゴリーの存在を認めつつ、そこから自覚的に脱却している表現者たちなのです。
そして活動するフィールドこそ異なれど、 既存のボーダーを越境し音を届けるという点で共通する3組が一堂に会すること自体が、現場のアーティストからリスナーへ向けて、さらに現在の音楽シーンに対するメッセージとなっていました。それを言葉にするなら、「自らの目で見ること、自らの耳で聴くこと、それこそが見えない壁を突破し、未知の世界との出会いをもたらしてくれる」ということです。