アーティスト自身の強い意志こそが、オーディエンスを動かしていく

この日のSuGのステージは、このイベントがただ異ジャンル間のギャップを楽しむだけの企画ではなく、出会う必然に満ちた表現者たちの共演であるということを、自らのステージを通して解き明かすようなライブでした。そんなバンドの意図がオーディエンスにもしっかり伝わっていたからこそ、一人ひとりが鳴らされる音に思い思いに向き合い、未知なる音と出会うことができる、多幸感にあふれたフロアが生まれたのだと思います。

キャパ数百人のライブハウスという規模だからこそ、それぞれの世界観が齟齬なく伝わった部分もあったでしょう。自分に合わないと思ったらすぐに移動できる大規模フェスと違い、ライブハウスでは一度観始めたらある意味逃げ場がないだけに、それぞれのステージと向き合わざるを得ない環境とも言えます。これは場所取りやアーティストによっての盛り上がりの差を生む危険性もありますが、SuGのオーガナイザーとしての彗眼と実行力、それに唯一無二のステージで応えたたむらぱんと BABYMETAL、音楽の持つ多様性を楽しむことの素晴らしさを体現したオーディエンス、すべてが幸福に融合したことで、会場に不思議な一体感が生まれていました。

安直で思考停止した右にならえの一体感ではなく、それぞれ違う存在同士でも音楽を通して一瞬でもつながることができるという事実の証明としての一体感。それを生んだのは紛れもなく「もっと音楽と積極的に出会ってほしい、もっと音楽を豊かに楽しんでほしい、」というアーティスト自身の強い意志です。

SuGのライブ中盤、客席の中ほどでライブを見ていたBABYMETALのファンらしき男性が、思わず体が動いてしまったという風にステージ前方に身を乗り出していく姿を見て、ああ音楽って比喩じゃなくて本当に人を動かすんだなあ、ということを改めて思い知らされました。こういう意志のかよったイベントがあり続ける限り、音楽の灯は決して絶えないと思います。

と同時に、自分にもまだまだできることがたくさんあるんじゃないかとハッパをかけられた気分にもなりました。なぜなら自分もこのイベントを通して未知の音楽と出会い、体と心を動かされたひとりだったからです。この感覚を、ひとりでも多くの音楽が好きな人たちに味わって欲しい。というわけで気が早すぎるのは承知ですが、次回の異種格闘技戦の開催を心から楽しみにしています。

 

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