NOCTURNAL BLOODLUST『THE BEST ’09-’17』
山口:最近は払拭されてきた感がありますけど、NOCTURNAL BLOODLUSTというバンドは、ラウドシーンとV系の間で、誤解と偏見と受けながら活動してきたんですよね。
でも、それとひたすら戦い続けて、結果的に『VISUAL JAPAN SUMMIT』や『渋谷が大変』に出る一方で、『SCREAM OUT FEST』や『LOUD PARK』にも出られるようになった。自分達のアティテュードを貫いて、誤解や偏見をバンドの実力でねじ伏せたところが、まずかっこいい。
あと、「ラウドシーンとV系の間」と聞くと、「曲が激しくてただ叫んでるだけでしょ?」みたいなイメージも付きやすいと思うんです。でも、ベスト盤を通して聴くと、もちろんブルータルなんだけど、すごくバラエティに富んだ楽曲をやっていることがわかりやすい。
高崎:いろんなものが洗練されていっててすごい。ヴォーカルのクリーンも初期より随分よくなってる。ラウド系ってテクニックだけに酔って他は何も伝わらないオナニーになりがちだけど、ノクブラからは死んでもオナニーだけはしないという確固たるポリシーを感じます。そこが他と違いますね。
藤谷:ノクブラって私の中では「野心と執念」のバンドなんですよ。それこそ数年前、V系のライブハウスに出始めた頃に一度ライブを見たことがあったんです。その時はピンと来なくて、「上手だけど…あんまり(V系としての)ケレン味がないな」と。
その1年後くらいに見る機会があって、そしたら見違えていて。その後の活躍はいうまでもなく……。もともと華があって、あとから技術がついてきたバンドは多いじゃないですか、その逆は少ない。あのカリスマ性は後天性だと思うんです。本当に努力でここまできたんだなと。だからこそ「魅せること」「楽しませること」に対して人一倍意識が高いのかなと。
山口:エクストリームだけどポピュラリティがありますよね。このベストには新曲2曲が収録されているんですが、『BREAK THIS FAKE』という曲が特に印象的で。従来通り充分にヘヴィなんですけど、すごくシンプルというかストレートな形になっていて、またひとつ別のステージへ行こうとしていることを予感させるところがありました。
既存曲で過去を振り返りつつ、今の形にリマスタリングして、なおかつ未来を感じさせる新曲があるというのは、ベスト盤として理想的というか、美しいなと思います。
Jin-Machine『全日本おもしろ選手権』
藤谷:ここで全く雰囲気が変わりますが、Jin-Machine『全日本おもしろ選手権』の話をしたいと思います。
えんそくもJin-Machineも「面白いバンド」と評されることが多い……っていうかまあ私もそうしてますけど、かなり違うんですよね。Jin-Machineの良さってこのタイトルに集約されていて、とにかく歌詞も曲も「面白がる」ということの楽しさにあふれています。「ヴィジュアル系のポーズ」も「通勤電車」も面白がって曲にしている。これもまたヴィジュアル系の自由さなんですよ。
山口:僕もすごく好きですね。今作だと、ひもりさん作詞作曲の『BLUE MOUNTAIN』がよかった。強烈にキャッチーなんだけど、これはいったいなんなんだ……?っていう(笑)。
藤谷:歌詞が延々と種田山頭火の「分け入っても分け入っても青い山」の繰り返しという。今年上半期いちばんの怪ソングですよ(笑)。そうやって、ジャズも演歌も面白がってるじゃないですか。まさに掲げている「コミックプログレッシブ」というか。
山口:今回「プログレ」って言い張ったのが強いですよね。先行シングルになった『†夏 大好きヴィジュアル系†』も、相当はっちゃけた展開だったし。
Jin-Machineって、昔は真面目に音楽やバンドをやることを恥ずかしがっていたきらいもあったじゃないですか。普通のヴィジュアル系バンドっぽいことが出来なかった。ライブでペットボトルを投げられないとか(笑)。
藤谷:それはA9とはまた別ベクトルの謎の自我ですよね。非・ナチュラルボーンV系の自意識ですよ。
高崎:ひどい(笑)。
山口:で、ペットボトルは恥ずかしいから「役に立つものを投げよう」っていうので、カップラーメンを投げたりしていて。そんな「謎の自我」を持っていた人達が、今はガッツリ音楽もバンドもやっていることにちょっと感慨深くなります。
藤谷:ベースの水月さんの脱退は惜しまれますが、卒業ライブも本当に良かったですし。いろんな想いをこめて、3枚目はこちらにさせていただきます。