プレッシャー世代の消費 トレンドは「ABC+D消費」
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しかし、プレッシャー世代は消費意欲を失ってしまったわけではない。松田さんはプレッシャー世代の消費トレンドを「ABC消費」というキーワードで説明する。
「まず、Aは『感情(Affection)』消費。プレッシャー世代はムダな消費は好まず、クルマやマンションなどの高額な選択的耐久財の購入には合理的な理由を求めます。しかし、その一方で若者世代の男性の約85%、女性の95%が1年以内に衝動買いを経験しています」
たとえば、これまでの世代にとって「成功の象徴」だったクルマは、プレッシャー世代にとっては移動手段のひとつでしかない。ほかの交通手段の方が効率的であれば、購入動機は失われてしまう。ところが、失敗してもリスクが低く、衝動買いがしやすい1000円以下の日用雑貨などは多く購入している。高額なものは慎重に選ぶが、日常品については店頭で「いいな」「心地良い」と感じたら、すぐに購入する傾向があるようだ。
「Bは『安心・安全(Blanket)』消費です。東日本大震災と福島第一原発事故のあと、多くの人が買い求めたのは食料や飲料でした。安全や安心を求める傾向は、原発事故に関するマスコミ報道の混乱もあって、さらに加速しているように見えます。取るべき行動についての情報の不足が生じたために、周囲と横並びの行動をとることで安心感を得ようとする、他者依存志向が強まったのです」
プレッシャー世代はこの他者依存志向が強い、と松田さん。たとえば、インターネットのランキングや、口コミをもとに行動し、その情報なしには安心して商品やサービスを選べないのも、他者依存志向の表れだと言う。
「Cは『つながり(Connection)消費。総務省の家計調査の費目を’11年3月の対前年比で見ると、寄付金が218円から2089円へと858%の驚異的な伸びを示しています。これを牽引したのが、消費によって他者との『つながり』を求めるプレッシャー世代です。彼らは住宅やクルマをシェアリングすることにも積極的です。これは、高品質なものを割安に使いたいというニーズだけでなく、シェアリングすることで他者とのつながりも求めているのでしょう」
また、晩婚化が進み、独身期間が大幅に延びていることも、プレッシャー世代が消費に「つながり」を求める理由のひとつだと松田さんは言う。
「晩婚化・核家族化が進んだ現代では、独身社会人の『ひとり家族』は珍しくなくなりました。地縁・血縁・社縁などのリアルな結びつきは希薄化し、その代わりとして、商品やサービスにつながりを求めるようになっているのです」
そして、このABC消費をつないでいくと、プレッシャー世代が目指す消費スタイル――充実した「日常生活(Daily Life)」を楽しむための「D消費」が見えてくる。たとえば、普段の自宅での食事や、他者とのつながりを深めるためのSNSなどへの支出が、この「日常生活(DailyLife)」消費にあたる。