■隠れた『家族のうた』と『東京全力少女』の関係

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この『東京全力少女』は、普通のコメディとして見ても十分に面白いのだが、じつは隠れた見どころとして、フジテレビ系で2012年4月から放送されていた『家族のうた』との関係が挙げられる。

『東京全力少女』の脚本は伴一彦で、言わずと知れた『パパはニュースキャスター』(TBS系)の脚本家。『家族のうた』の企画が発表された時、『パパはニュースキャスター』と設定が似すぎているとTwitterで発言した人だ(詳しくは「盗作騒動も影響!?『ATARU』が『家族のうた』を圧倒!」を参照)。結局、『家族のうた』は設定を変更して放送されたが、3%台の視聴率が続き、8話で打ち切りになった。

今期の『東京全力少女』は、そんな伴一彦が『パパはニュースキャスター』をリスペクトして新たにドラマを作るなら、こうやって作るんだ、というのを自らやっているフシがあるのだ。

『パパはニュースキャスター』は、独身の主人公の元にいきなり3人の娘が現れてパパになるという父娘関係を描いたコメディだが、『東京全力少女』も15年ぶりに娘が現れるという父娘関係を描いたコメディで、娘側を主人公にして描いている。

『東京~』に出てくる娘はひとりだが、父親の女性関係が3人。『パパ~』では愛と書いてめぐみと読む娘が3人登場したが、『東京~』では綺麗の麗と書いてうららと読ませている。どちらも印象的な名前で、その名前で父親がピンとくるという設定だ。『東京~』の初回冒頭で、麗がカメラ目線で視聴者に語りかけるシーンがあったが、これも『パパ~』で時々見られた光景。ストーリーはまったく別物だが、やはり意識して企画したと考えたほうが自然だろう。

もしこれが事実なら、そのことを事前に情報として流したほうが話題になったと思う。しかし、TBSとフジテレビの盗作騒動を、今さら日テレが持ち出すのはいくらなんでもマナー違反になる。だいたいそういう話題作りは、伴一彦がもっとも嫌うやり方だろう。

だからあくまでも、これは伴一彦が若い作り手に対して、過去の作品にインスパイアされるのはいいが、きちんとオリジナルを作れと示している作品なんじゃないだろうか。まあ、これで『東京全力少女』が高視聴率ならカッコイイんだけど、そうはいかないのがドラマ作りの難しいところなんだな。

とにかく、テレビドラマは、視聴率だけで作品の内容や主演の演技力まで判断されがちだけど、この『東京全力少女』に関しては、実際に見るとかなり面白いし、主演の武井咲もキュートに主人公を演じている。まわりがどう言おうと、個人的には『東京全力少女』を最後まで全力で楽しみたい。


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たなか・まこと  フリーライター。ドラマ好き。某情報誌で、約10年間ドラマのコラムを連載していた。ドラマに関しては、『あぶない刑事20年SCRAPBOOK(日本テレビ)』『筒井康隆の仕事大研究(洋泉社)』などでも執筆している。一番好きなドラマは、山田太一の『男たちの旅路』。