脚本家・福田靖の輩出

『HERO』という企画を具体的な設計図にした脚本の力も大きな魅力だった。脚本の福田靖はこのドラマでメジャーになったといっていいと思うが、じつは2001年の連ドラ初回は、ヤングシナリオ大賞出身の大竹研という人が書いていた。

もともと複数の脚本家が参加する予定だったらしく、福田靖は第2話から書いていて、2006年のスペシャル以降は映画も含めてすべて福田靖が脚本を担当している。

福田靖は『HERO』のあと、『ガリレオ』や『龍馬伝』などの脚本も担当して、今や押しも押されもせぬ有名脚本家になった。この福田靖を輩出したのも『HERO』の大きな功績だったと思う。

ちなみに、プロデューサーの石原隆が関わったドラマでは、2008年に木村拓哉が主演した『CHANGE』でも福田靖が脚本を担当していた。木村拓哉が史上最年少の内閣総理大臣になる話で、最終回では木村拓哉がカメラに向かって22分間ノーカットのスピーチをするという有名なシーンもあった。

石原隆は1997年に三谷幸喜と『総理と呼ばないで』も作っているので、比べて見てみると面白いかもしれない。

シリーズ化を可能にした第1シリーズ

シリーズものというのは、最初のコンセプトがしっかりしていると、何作続けても面白さが廃れない。大事な部分がブレないので、話がどういう方向に広がっても作品として崩壊しないからだ。

むしろ、シリーズを重ねるごとに、登場人物たちが生きていたであろう時間経過が、描かれなくても想像できるようになる。その視聴者の想像が当たっても当たらなくても楽しめるのが、優れたシリーズものなんじゃないだろうか。

『HERO』では、たとえば久利生公平(木村拓哉)と雨宮舞子(松たか子)の関係がひとつの見所になっている。決して恋愛ドラマではないのに、ふたりの関係を想像するだけで楽しくなってくる。これも第1シリーズでさまざまな事件を捜査しながら、いかにふたりが信頼しあっているかを描いていたからこそだ。

7月18日(土)に公開される映画第2弾では、また雨宮が帰ってくる。メインのストーリーもさることながら、久利生と雨宮の関係がどう描かれるのかも楽しみだ。

今回の映画も、鈴木雅之が監督、服部隆之が音楽、福田靖が脚本を担当する。第1シリーズの頃と変わらない面白さを今回も期待できそうだ。

たなか・まこと  フリーライター。ドラマ好き。某情報誌で、約10年間ドラマのコラムを連載していた。ドラマに関しては、『あぶない刑事20年SCRAPBOOK(日本テレビ)』『筒井康隆の仕事大研究(洋泉社)』などでも執筆している。一番好きなドラマは、山田太一の『男たちの旅路』。