広瀬すず(左)と中条あやみ

 実在する福井県の高校チアリーダー部が、チアダンスで全米制覇をするまでの軌跡を描いた青春映画『チアダン』。本作でチアダンスに初挑戦し、過酷な撮影を乗り越えた広瀬すずと中条あやみが、DVDの発売に伴い、撮影中の思い出深いエピソードや自身の変化、続編への期待などを語った。

-改めて本作を鑑賞し、また撮影を振り返ってみていかがですか。

広瀬 (中条に向かって)自分たちのドキュメンタリーみたいで何回見ても泣けるよね。このシーンの時はこうだったよね…という思い出が全シーンであります。

中条 うん。キャラクターそれぞれでストーリーを動かす場面があるから思い出深いところは人によって違うけど、やっぱり泣けます。撮影中は急に新しい振りが入ったり、振りが変わったりしたので、皆でよく自主練習をしていました。

-皆さんの“やる気”には河合勇人監督も驚いていたそうですが、そこまで頑張れた理由はどこにありましたか。

中条 せっかくだからいいものを作りたいし、自分に負けたくなかったからかな。劇中のダンスは今でも踊れます。忘れたくても忘れられないぐらい練習しました。

広瀬 映画で使われた曲がショップとかで流れると踊っちゃうよね。私は練習に参加できないことも多かったので、皆に負けたくないという気持ちと、完璧主義なので自分に負けたくない、もっと上に行きたいという欲がありました。

-ダンスへのこだわりは撮影中にも表れたそうですね。

広瀬 ラストのアメリカ大会でのダンスシーンは意外とサラッと終わったので、もう1回通しで踊らせてくださいってお願いしました。

中条 最後だから全員でちゃんと合わせたいっていう思いがあったよね。私は(劇中で)センターポジションを外されたのに、無意識にすずの横でセンターの振りで踊って、「センターが二人いる!」ってなったこともありました。「どんだけセンターに未練があるの?」って感じですよね(笑)。

-特に思い出深いシーンはありますか。

広瀬 (チアダンス部顧問・早乙女先生役の)天海(祐希)さんとのアメリカ大会で優勝が決まる直前の(感極まる)シーンは10テイク以上やったけど、毎回先生の顔を見て、体に触れた瞬間に「うわ~」という感情に襲われたので、意識的に気持ちを切り替える必要もなくできました。その後のメンバーと大号泣するシーンでは皆顔がグチャグチャで、それが役とかに関係のない本当の感情なんだと感じて、とてもいとしく思えました。

中条 私もあのシーンは自分の部活を思い出して、早乙女先生を見ていると当時の先生の顔も浮かんで、今と昔、両方の気持ちで涙が出ました。

-広瀬さんは笑顔が魅力的で何があってもめげないひかり役を演じましたが、役へのアプローチはどうされましたか。

広瀬 私は原作がある作品に出ることが多くて、その場合は自分から役に寄っていきますが、今回はモデルとなった方はいますが、映画オリジナルの要素もあったので、そこまで意識する必要はないと思い、自分に役を染み込ませるというスタイルに初めて挑戦しました。

-新しいスタイルで挑んだ役づくりは苦労しましたか。

広瀬 ひかりになった自分から言葉や動き、感情が自然に出てきたので、あまり苦労はしませんでした。監督も「自由に」と言ってくださったので、それを「信頼してくれている」という良い意味で捉え、伸び伸びとやれたのですごく楽しかったです。でも、ひかりは常に全力を出しているから、演じていてエネルギーを使うので、広瀬すずに戻った時は「チーン…」って無言になっていました(笑)

-知性・美貌・ダンス、全てを兼ね備える優等生の彩乃役を演じた中条さんはどうでしょうか。

中条 彩乃になるのはすごく難しかったです。もともとリーダーっぽくなく、人について行くタイプなので、主演として引っ張っているすずがリーダーみたいで、すごいなと思いながら演じていました。

-お二人にとってはチャレンジとなる作品に携わり、自分自身の成長も実感できたのでは?

広瀬 世の中のことはやってみないと分からないことだらけだし、やらないで諦めるのはもったいないと考えられるようになり、視野や心が広くなったと思います。劇中の「努力しても無駄なことはあるけど努力し続けるしかない」というせりふもどストレートに胸に響いて、悩んだ時の支えになっています。

中条 一緒ですね。メンタル的にも強くなって変わったと思います。これで成長してなかったら謝れ!って感じ(笑)。

-お二人はもともとは雑誌『Seventeen』のモデルの先輩後輩ですが、互いの印象についても教えて下さい。

広瀬 一つのことを追及したり考えたり、すごい真面目で偉いし、いいなぁと思います。私は直感とか感覚で生きているから、ちゃんと考えたことがあまりないかもしれません。それが良い時もあるけど、それだけじゃ駄目な気がする…。そういう感覚ってうまく言葉にできなくて、人に伝わらないから、結局「1人で頑張ります」ってなるんです。

中条 でも考えても答えが出ないんだよ…。すずは1人で頑張れる強さがあるからいいよ。

広瀬 あと、どの角度から見ても美しくて飽きないんです。何十時間でも間近でずっと見ていたい。本当にうらやましい。美しく死んじゃう役(映画『ライチ☆光クラブ』)も素敵だったし。

中条 死ぬか、殺されかけるかだよね…(笑)。こんなにキラキラした役は初めてでした。すずは等身大の高校生役が多いけど、そういうのが私にはできないからうらやましいよ。

-さまざまな“初”にトライした本作への出演がお二人にとって有意義だったことが分かりました。では、もし続編があったら?

広瀬 やりたい!でも依頼は1年半前には聞きたい。続編だからダンススキルはこれ以上のはずだから、ストレッチと筋トレを週6ぐらいで入れてもらって、本番までには完璧に仕上げたいです。

中条 そうしたら、もう撮影中に「しんどい」とか言えないよ…。でも、私も続編やりたいです!

(取材・文・写真/錦怜那)