日本全国のプロ・オーケストラ36団体が加盟する日本オーケストラ連盟が旗振り役となり、アジア太平洋地域のオーケストラを招いて行なわれる、文化庁芸術祭主催の「アジア オーケストラ ウィーク」。2002年にスタートして今年で16回目。これまでに15か国から47のオーケストラが参加しているオーケストラの祭典が、いよいよ開幕する(10月5日(木)~7日(土)・東京オペラシティコンサートホール)。
来日するのは、上海フィルハーモニック管弦楽団(10月5日(木))とマレーシア・フィルハーモニー管弦楽団(10月6日(金))。日本からは関西フィルハーモニー管弦楽団(10月7日(土))が出演する。上海フィルは、上海映画管弦楽団(1954年創立)と上海放送管弦楽団(1950年創立)が1996年に統合された楽団で、上海市の放送メディアグループが運営し、2004年から現称となっている。今回は首席指揮者リャン・ツァン(1979年生まれ)が率いての来日。芥川也寸志の《トリプティーク》とショパンのピアノ協奏曲第2番、ドヴォルザークの交響曲第8番を演奏する。
今シーズン創立20年目を迎えているマレーシア・フィルは、世界有数の企業である国営石油会社ペトロナスが運営する楽団。豊富な資金力に物を言わせて、クアラ・ルンプールのペトロナス・ツインタワー内にある豪華ホール、ペトロナス・フィルハーモニック・ホール(920席)を本拠に、世界20数か国のトップ・プレーヤーたちからなる多国籍軍を構成している。
指揮者の古澤直久は1973年生まれ。桐朋学園でコントラバスを学び、ザルツブルク留学を経て、2003年にコントラバス奏者として同楽団に加入、昨年から専任指揮者(レジデント・コンダクター)に就任した。プログラムは武満徹《弦楽のためのレクイエム》と、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番《皇帝》、同楽団の委嘱作品で8月に初演されたヴィヴィアン・チュア《栄光の頂点》。チュアは1974年生まれのマレーシア人作曲家。
ホスト・オーケストラ役の関西フィルは音楽監督の名ヴァイオリニスト、オーギュスタン・デュメイの弾き振りで、ショーソン《詩曲》、ラヴェル《ツィガーヌ》、マスネ《タイスの瞑想曲》、ビゼーの交響曲第1番を。
西洋のクラシック音楽という同じフィルターを介してなお、アジア各国の多様な文化を感じ取れるのは実に面白い体験だ。
文:宮本明