五代才助(友厚)役のディーン・フジオカ

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「青天を衝け」。時代は明治に移り、主人公・渋沢栄一(篤太夫/吉沢亮)は、パリ滞在で学んだ経験を生かし、新しい日本を作るために走り始めた。そんな栄一とこれから関わっていくのが、後に大実業家として「西の五代、東の渋沢」と並び称される五代才助(友厚)だ。連続テレビ小説「あさが来た」(15~16)に続く二度目の五代役となるディーン・フジオカが、2人の関係や役に込めた思いを語ってくれた。

-これから五代は、栄一と関わる機会も増え、さらなる活躍を見せることになりますが、見どころを教えてください。

 「西の五代、東の渋沢」と比較されることが多いですが、五代としては渋沢のことを「同じ未来に向かって進んでいく仲間」と捉えています。ただ、五代の方がより経験や見識も豊かなので、渋沢をリードしていくような関係になるのかなと。

-幕末の時点では、幕臣の栄一と討幕を目指す薩摩藩士の五代ということで、相反する立場にありましたが、これから2人は、お互いの存在が支えになっていく部分も出てくると?

 そうですね。やっぱり、新しいことにチャレンジするのは、どれだけ確信を持っていたとしても、とても難しいことだと思うんです。その苦労を乗り越えていく上で、場所は違っても同じ時代に志を共にする仲間が頑張っている姿は、渋沢と五代、双方にとって大きな影響があったでしょうし、エールになっていたのではないでしょうか。

-そういう意味では、栄一役の吉沢さんとお芝居の差別化を意識している部分はありますか。

 競争相手と言えなくもありませんが、自分の中ではやっぱり、「よりよい未来を一緒に作っていく仲間」という意識の方が強いんです。だから仮に、劇中で渋沢からは五代が、「厄介で手強いライバル心を燃やす相手」に見えるのであれば、五代から見る渋沢との関係は、もっと大きく包み込むようなあり方でいるべきなのかな、と。渋沢の成長は、五代にとって頼もしい仲間が増えることを意味しますし、日本をよりよい未来へと一緒に導いていく上で、渋沢を頼りにしていたはずですから。そういう意味では、接点を持つときも、より包容力のある形で、ゆとりを持つようなイメージで演じています。

-以前お話を伺った際は、「今回は『あさが来た』の五代とは違う」とおっしゃっていましたが、物語が進んだ今はどんなふうに感じていますか。

 渋沢をはじめ、政府や民間にいろいろなキープレーヤーが登場し、新しい日本を作っていったのが明治という時代です。その中の一人である五代友厚という人物が、実際にどんな信念や哲学に基づいて行動し、現代の社会にどんな影響を与えたのか。今回の方が、そういうことを史実に基づき、より分かりやすく詳細に描いています。

-同じく初登場の際は「今回の五代は『あさが来た』よりもワイルド」というお話もされていましたが、ここまで演じてきた五代の魅力をどんなふうに考えていますか。

 どれほど先見の明があったのかが、より具体的になっています。これは、立場によっては、すごくしたたかに見えることもあれば、頼もしいという印象にもなる。だから、それを魅力というかどうかは表裏一体です。ただ、もし競争相手がいるとすれば、一筋縄ではいかない存在であることは間違いないでしょう。その根本にあるのは、五代が広い視野と行動力を兼ね備えた人物で、具体的に何をどんな順番でやっていくべきか、確信を持っていたということ。そういう部分からにじみ出る自信みたいなものが、五代の魅力ではないでしょうか。

-二度目となる五代役ですが、役とご自身との距離感をどんなふうに捉えていますか。

 自分にとって、五代友厚という人物との出会いは大きなもので、現在進行形で今も気付きを与えていただいている存在です。そういう意味では、とても影響を受けていることは間違いありません。ただ、自分ではそれほど客観視できていないのかな…と。一俳優として、五代友厚という人物との距離感をどう測るべきなのか、その尺度を持ち合わせていない、とでも言ったらいいでしょうか…。もちろん会ったことはなくても、すごく恩義を感じる存在ですし、こうしてもう一度演じる機会を頂けたことも、何か見えない力で導かれているとしか思えませんし…。

-なるほど。

 ただ、今になってみると、「あさが来た」で初めて出会い、それ以降に学んだ五代さんの偉大な思想や生きざまが、より多くの人たちに伝わり、インスピレーションを与えられたらいいな、と思っています。そのために、自分ができることを、全力を尽くしてやっていこうと。距離感としては、そんな感じでしょうか。

-五代からいろいろな気付きを得ているとのことですが、その中で特に大きなものは?

 五代さんの生きざまからは、「後世に何を残すのか」という意思が強く感じられます。それは、五代さんの子孫の方にお会いしたときにも感じたことです。一個人の幸せを追求したとき、子孫や後世にとってプラスになることと、個人の人生にプラスになることは、必ずしもイコールにならない場合があります。それでも、五代さんは後世に何かを残すことを選んだ。それが、自分が理解する彼の生きざまです。そこには、胸打たれるものがあります。

-ところで、第二十七回では、五代と栄一はお互いを認識せずにすれ違う形になりましたが、これからきちんと顔を合わせる場面も出てくるようですね。

 そうですね。その場面のリハーサルをしているとき、吉沢くんが「五代さん、ここのせりふ、こう言ってもいいですか?」と話しかけてきたんです。普段、役者同士でそういう話をすることがないので、すごく印象に残っています。正式な2人の初対面ということで、そのシーンに対してそれぐらい熱量を持って向き合っていたんだろうなと。「青天を衝け」という作品にとっても一つのターニングポイントとして、何かの始まりを予感させる希望に満ちたシーンになっているのではないでしょうか。

(取材・文/井上健一)