ニッポン放送が主催する演劇・ラジオ番組イベントのトップバッターとして、作・演出・企画を根本宗子が務める新作ミュージカル、ブランニュー・オペレッタ「Cape jasmine(ケープ・ジャスミン)」が10月6日・7日に3公演限定で上演される。本作は、演出家不在となった新作ミュージカルを、せめてもと、記者会見スタイルで楽曲だけ順に披露することになった6人の女優の物語。本作に出演する横山由依(AKB48)と中山莉子(私立恵比寿中学)、そして根本に公演への意気込みや、互いの印象などを聞いた。
-根本さんは、今回が約1年ぶりの演劇活動復帰となりますが、活動休止に至ったそもそもの理由と、どのような経緯での復帰だったのかを教えてください。
根本 昨年からのコロナ禍でエンターテインメント業界もいろいろなことがありましたが、自分が演劇活動を休止しようと思ったのは、コロナはあまり関係がないんです。昨年は、コロナ禍に合わせてさまざまなチャレンジをしてきましたが、それ以前から「広がりがある演目を企画したい」と思ってやってきた中で、自分自身がお客さんが今の演劇に対して感じていることを感じづらくなっていることに気付いて、それならばいったん、お客さんに戻ってみようと思ったんです。純粋に演劇が好きで、ただ客席から見るのが楽しかった自分は何を感じていたのか、今の自分がそれをしたら何を感じるのかを知ることで、今後も楽しく演劇を続けられるのではないか、と。演劇が一番好きでかっこいいと思ってやっているから、ずっと「好き」を失いたくなかったというか。それで1年間、さまざまな演劇を見たり、考えてきて、「今、こういうものがあればいいのにな」と自分が明確に思えるものが出てきたので、それを今、作ろうと思い、復帰となりました。
-横山さんは、今回、演劇公演での歌唱は初なんですね。
横山 そうなんです。もともと歌手になりたくて、この業界に入ったので、歌は大好きなんですが、演劇作品の中で歌うことはこれまでなかったのですごく楽しみにしています。それから、根本さんの作品には、いつか参加させてもらいたいと思っていたので、出演できると聞いたときは震え上がりました。うれしくて夢のようです。
-中山さんは、今回の出演の話を聞いてどんな気持ちでしたか。
中山 6年ほど前に、根本さんが脚本を書かれた配信ドラマに出演させていただいたのですが、根本さんとまたお仕事をしたいとずっと思っていたので、今回のお話を聞いて、すぐに「やりたいです!」とお伝えしました。
-中山さんにとってアイドルの大先輩でもある横山さんとの共演になりますが、それについてはいかがですか。
中山 まだちょっと緊張して、一対一でお話しができていないんです(笑)。ですが、アイドルとしても、たくさんお聞きしたいことがあるので、この舞台の期間中にお話しができるようになって、いろいろアドバイスしていただけたらいいなと思います。よろしくお願いします。
横山 私は、今回、中山さんと初めてお会いしたので、中山さんは(脚本通りの)そういう人なんだと思っちゃっていました(笑)。お芝居がうま過ぎて。ですが、あまり当てはまるところがないと聞いて、いい意味でびっくりしましたし、本当はどんな人なんだろうと、また興味が湧いています。
-本作では、どんなところに注目して見てもらいたいですか。
横山 台本を読んで、根本さんが世の中に違和感を感じていることを入れられているのかなと感じています。私は違和感を覚えても自分の心に秘めておいて、口に出さないんですが、作中で話しているせりふにはすごく共感できます。
根本 演劇は、そういった「日常で感じた違和感」を言うことでスッキリしてもらえたり、共感を生んだり、笑えたりしますよね。今回、横山さんは違和感を感じるパート担当で、中山さんは違和感を出すパートが担当です。アイドルという同じ職業のお二人ですが、舞台上では全く違うものを出していくと思うので、そこは見る方にも楽しんでいただきたいです。 昔から、脚本を書いていると思うんですが、今はコロナが世の中で一番大変な出来事で、それ以外のちょっとした大変なことは空気を読んで言わないでおこうという世の中になってしまっていると思うんです。もちろん、コロナも大変なんですが、コロナ以前から、ある「しんどいもの」はコロナになってもしんどいんですよ。大きなテーマではなく、私の中では世の中で大きな問題があっても変わっていない心のうちの方が大事なので、今回は、そこを重くなり過ぎず、笑っていただけるものにしてお見せできたらと思っています。見る人によって捉え方は変わるストーリーになっていると思います。
-改めて本作への意気込みと、公演を楽しみにしている人たちにメッセージを。
根本 今は、なかなか「演劇を見るためにぜひ劇場に!」とは言えませんが、今やる意味があると思いますし、今しかできないチャレンジを、たくさんの方の力を借りて作り上げていきます。感染対策はしっかりしているので、安心して見に来ていただければと。今回は2日間で3公演しかないですし、このメンツが再び集まることは難しいと思うので、数年後に「これ、見てた!」と自慢できる作品にしたいと思っています。そういう意味でも見逃さないでチェックしてもらえたらうれしいです。
中山 皆さんキャラが濃くて、演じている私でもクスクス笑ってしまう作品です。アイドルや芸人さん、アーティストさんが合わさって本当に面白い舞台ができるんじゃないかなと私自身も楽しみにしているので、ぜひ足を運んでいただけたらうれしいです。
横山 私は生のステージを見て憧れて芸能界を目指して、今、こうやって舞台に立たせてもらえる機会をもらっています。それと同じように、この作品が見に来てくださった方の人生にも影響を及ぼすかもしれないという思いで臨んでいます。このコロナ禍でいろいろなことが制限されていますが、対策をして、演劇をしていきたいと根本さんを筆頭にこうしてやらせていただきます。3公演だけという特別な時間になりますので、皆さんが来たことを後悔しない作品を、皆さんと一緒に作って行けたらと思いますので、ぜひ舞台を見に来ていただけたらうれしいです。
(取材・文・写真/嶋田真己)
ブランニュー・オペレッタ「Cape jasmine」は、10月6日・7日に都内・日本青年館ホールで上演。
公式サイト https://event.1242.com/special/cape_jasmine/