僕らも映画祭に招待された際に沢山の映画を観る機会があるのですが、その中で感じるのは、各国の映画監督が何を感じ、考え、何に問題意識や肯定感を持って映画を作っているかと言う事です。その中で感じる、見えてくる各国の、もしくは個人やその家族を取り巻く人生の中にある普遍性や共通性。
もっと分かりやすく言うと、世界の家族の中で起こっていることは日本の我々の家族の中でも起こっていることであり、我々家族の問題意識や楽しさを、映画を通して世界中の人たちと共有し合うことができれば、もしかしたら、互いの家族の問題を解決したり、一緒に笑い合える何かを共有できるのではないかと思っています。
『おおかみこども…』は花という女性の13年間の人生の話とも言えると思います。彼女がどう生きていくかという人生の中に、おおかみおとことの出会いや、親になること、また子供達の成長などがある。確かに、おおかみこどもと言うモチーフは、ある種のファンタジーではあるけれど、でもそれ以外は、世界中の誰にでも起こりえる人生の体験や喜びが描かれています。
自分が作って行きたい映画は「スタジオ地図」の名前の由来にもなっている
細田監督と「スタジオ地図」が作っていきたい映画。それは、「スタジオ地図」の名前の意味、志にもなっています。アニメーション映画の歴史はそれなりに長いとは言えど、まだまだ実写の映画ほどチャレンジしていない可能性は無限に広がっている。そう言った新しいモチーフやテーマ、表現にチャレンジをしながら、公共の利益にかなう、沢山の方々に楽しんで頂けるアニメーション映画を作っていきたい。これからも背筋を正して、一本一本。そう思っています。
齋藤プロデューサーの言葉から見えてくるのは、アニメーション、そして映画作品というものの本来の在り方だ。身近なテーマの公共性のあるもので、そして語れるもの。昨今の人気アニメーション映画も、題材や世界観は架空のものであっても、そこに描かれているテーマは誰もが共感できる身近なもので、そして語りたくなるもの。
人と人を繋ぐ役割を果たしていて、コミュニケーションの大きな媒介となっているのが、結果としての今のアニメーション人気の要因でもあるのかもしれない。
また作品作り、アニメーション業界自体も、人が行き来して寄り集まり、成り立っている。アニメーション人気によってさまざまなスタジオにも注目が集まっているが、齋藤プロデューサーは「スタジオというより、作品と人」だと語る。