いま最もブレイクしているマンガの現場では何が起きているんだろう?
連載開始からわずか3年で初版部数が約7倍に跳ね上がり、単行本のシリーズ累計部数1000万部(1巻〜10巻)を達成。アニメ化、小説化、ゲーム化、舞台化、劇場版アニメ化と多彩に展開し、いま最も躍進しているマンガ——『青の祓魔師(エクソシスト)』。この作品を担当している、『ジャンプSQ.(ジャンプスクエア)』編集者の林士平さんに、その急激なヒットの経緯と変化を伺った。
林士平(りん・しへい)さんは集英社入社7年目の中堅社員。彼が、のちに『青の祓魔師』を描く漫画家・加藤和恵さんと出会ったのは、入社して2年目のこと。月刊誌『ジャンプSQ.』('07年創刊)の立ち上げのころだった。
「入社して1年で、月刊『ジャンプSQ.』立ち上げメンバーの一員になったんです。立ち上げメンバーは6人。僕は一番の下っ端の編集者でした。その創刊間際のころに加藤和恵先生とお会いしました」
漫画家が編集者と出会うきっかけは百人百通りだ。編集者側から人気漫画家へ電話やメールで連絡をすることもあれば、漫画家が集う飲み会で知り合うことも。加藤和恵先生と林さんの出会いは、漫画家が編集部にアプローチする「持ち込み」だった。
「『ジャンプSQ.』の副編集長(当時)の嶋(智之)が、加藤先生からの持ち込み依頼の電話を取りまして。「『原作』の持ち込みっていっているけれど……」と微妙な顔をしていたのをよく覚えています。まっさらな新人は完成原稿をたいてい持ち込むものなんですよ。「原作」というのは、まだ作品を書き上げていない方なので、どんな実力かすぐにわからない。でも調べてみたら、加藤先生はすでにほかの出版社からデビューされていたんですね。新人編集者の僕にとって、連載作品を描ける力を持った作家と知り合えるのはうれしいことなので、すぐにお会いしました。実際にお会いしたら、やたら絵の上手い作家だなあと思ったことをよく覚えています」
そのとき加藤先生が『ジャンプSQ.』に持ち込んだ原作が、いまの『青の祓魔師』の原型。林さんと加藤先生はその作品を一年がかりで練り上げ、まずは読み切り作品として仕上げることになった。