「あなた限定」を強調する
会社で大きな飲み会で幹事をするとしよう。あなた自身も気乗りしないし、嫌がる人も多そう。そんな集まりに、一斉メールで出席をつのると、「その日は別件がありまして……」などと、適当な断り文句が返ってくるのは目に見えている。でも、「○○さんには、ぜひ来てほしいんです!」と送れば、「それなら行こうかな」と思ってもらえるかもしれない。少なくとも、機械的に断られることはないだろう。
チームワーク化
「連れション」という言葉があるのは、トイレに行きたくないときでも、誘われると「じゃあ、行っておこうかな」と同行する人が多いから。同様に、その人が自発的にはやらないことでも、「ぜひ一緒に」と誘えば応じてくれることもある。
例えば、運動不足で太ってしまった恋人に対し「痩せるために走ってきてよ」と言うより、「一緒に走ろうよ」と誘うほうが、重い腰を動かすのに効果的。
感謝の言葉をプラス
感謝の言葉を投げかけられた直後に相手の頼みを断るのは、誰だって気が引けるもの。もし「仕事の打ち合わせも兼ねた友人との食事会」という、仕事かプライベートかの判断が微妙な領収書がある場合、「領収書お願いします」ではなく、「○○さん、いつもありがとうございます。よろしくお願い申し上げます」と言うと、落としてくれる確率が上がる。
細々とした頼みごとに応じてもらえるようになれば、日々はいくぶんスムーズに進むようになるはず。また、告白や面接などの人生の大一番も「付き合ってください」「働かせてください」というお願いの一種。そう考えると、伝え方の技術を身につけ、イエスの回数を増やすことは、人生をがらりと変える第一歩なのだ。
年齢を重ねていくだけで言葉は自然と磨かれていくが、一度プロからポイントを学べば、成長スピードはぐんと加速する。『伝え方が9割』は、心に響く言葉をつくる手順が書かれた、いわばレシピ本のような1冊。プロの技術を真似て、お願い上手を目指してみては?
●佐々木圭一
ささき・けいいち 上智大学卒業後、1997年に博報堂に入社。コピーライターとして、「プレイステーション」や「アジエンス」、Mr.Childrenなどを手がけるほか、伝記『スティーブ・ジョブズ』に登場するクリエイティブ・エージェンシーに所属した経験も持つ。国内外合わせて51のアワードを受賞。作詞家としても、郷ひろみやCHEMISTRYの楽曲に歌詞を提供している。また、上智大学で非常勤講師を務めるなど、多岐にわたって活躍中。