東京芸術劇場の新しいリサイタル・シリーズ「VS」(ヴァーサス)に、ジャズ・ピアノの大御所・山下洋輔と鍵盤楽器奏者・指揮者の鈴木優人が登場する[3月4日(金)東京芸術劇場コンサートホール]。
山下「僕が呼ばれているからには、きっかけさえあればどんどんアドリブになる。そこに鈴木さんを巻き込んでしまおうということです」
鈴木「洋輔さんの胸を借りて、がっつりやらせていただきます」
二人のピアニストが2台ピアノで競演するこのシリーズの中でも最も「VS」色の強い顔合わせだが、じつは二人とも麻布中学・高校の卒業生。そのOBオケで演奏した《ラプソディ・イン・ブルー》が最初の共演だった。
鈴木「僕が中学生の時、創立百年史にCDが付いていて、そこに洋輔さんの演奏が入っていたんです。OBにこんなすごい人がいたのかと驚きました」
山下「数年前にいきなり、麻布OBオケというのを作ったからお前はガーシュウィンを弾けと。僕は麻布から国立音大に行きましたけど、この人は東京藝大に行って、オランダに留学もして大活躍している。彼にしかない独特のものがあるミュージシャンで、それを楽しんでます」
バッハからガーシュウィン、山下洋輔まで。クラシックのリングの上で戦うジャズ・ルールの他流試合といったところか。
山下「ジャズマン同士でも一回一回が他流試合ですからね。相手が何をやってくるか、それに応じてこっちが何をやるか」
鈴木「VSですし、事前の打ち合わせはほとんどないです」
山下「最初のテーマだけ決まっているとかね。曲に寄りつつも勝手なことをする」
鈴木「前に一度2台ピアノで手合わせしていただいたのが、僕にとっては革命的だったんです。お客さんを巻き込んで即興して、会場の空気を作品の色にしていく。目の前の正しい音符を弾くよりインパクトのほうが大事なんだという。すごい教えがありました」
メインは《ラプソディ・イン・ブルー》を2台ピアノで。
鈴木「洋輔さんのソロ・パートは独特です」
山下「そうですね。オーケストラとやる時も、僕のパートはほとんどジャズのイディオムでやってしまいますので」
鈴木「僕のほうはオケ・パートを軸にした、新しいヴァージョンです。本当に楽しみ。今年一番ドキドキする本番です」
山下「どの曲でも、それぞれの個性がくっきりと出てくるはず。僕の立場から言えば、ジャズ・ピアニスト同士がやっているような聴き方ができると思いますよ」
「芸劇リサイタル・シリーズ 「VS」 Vol.2 山下洋輔 × 鈴木優人」の公演情報はこちら
(取材・文:宮本明)
■芸劇リサイタル・シリーズ 「VS」 Vol.2 山下洋輔 × 鈴木優人
日程:2022年3月4日(金) 19:0開演
会場:東京芸術劇場 コンサートホール (東京都)