膨大な情報量に支えられた『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』
【みどころ】
・人気シリーズのスピンアウト漫画が待望のアニメ化
・戦いあり、友情あり、ドタバタあり、シリアスありの正統派(?)魔法少女コメディ
・膨大な『Fate』世界の情報量をコンパクトに凝縮
2013年夏からアニメ放送が発表された魔法少女モノのニューフェイス。世界観やキャラクターのベースになるのは10年以上も人気を誇るビジュアルノベルゲーム『Fate/stay night』で、そういう意味では非常に歴史あるコンテンツの一部と言えるかもしれない。コミックスは全2巻でひとまず完結し、現在は『プリズマ☆イリヤ ツヴァイ!』→『プリズマ☆イリヤ ドライ!!』と3シリーズ目の連載に突入している。
初期のストーリーはこれまた定番というか鉄板。日本の学校に通う平凡な小学生の(こればっかりだな)イリヤスフィールが、いきなり魔術師の戦いに遭遇。ひょんなきっかけから魔法のステッキで変身することになり、町で発生する異変と戦っていく。
先に紹介した2作品よりシリアス展開は控えめで、ギャグとコメディのドタバタ要素が多め。また、あざとさ満点の読者サービスシーンは『リリカルなのは』さえも上回っている。その一方で戦闘シーン描写にも手抜きはなく、『Fate』シリーズの設定をうまく生かした描写がなされている。
スピンアウト元の『Fate/stay night』は、魔術が人知れず存在する現代で、どんな願いも叶えるという“聖杯”をめぐり、魔術師たちが魔力と策謀を尽くして戦うストーリー。特徴的なのが、ヘラクレスやアーサー王といった伝説の英雄を使い魔(英霊=サーヴァント)として召喚し、その力を借りながら戦っていくという聖杯争奪戦のルール。いわば『ジョジョ』のスタンドが、もっと具体的な自我をもったようなものと考えればいい。
スピンアウトとなる『プリズマ☆イリヤ』では、このサーヴァントシステムをカードバトル方式にアレンジ。カードから必要に応じて英霊たちの能力を引き出したり、ときには魔術師自身に憑依させて“英霊そのもの”として戦うことも可能。魔術・肉弾戦・切り札となる英霊カードをあわせた見応えあるバトルが展開される。ゆるゆるな日常シーンと派手な戦闘シーンとのギャップがたまらなく楽しい。
スピンアウト作品の常として長所であり短所でもあるのが、原典となる『Fate/stay night』の設定を多量に使っている点。もともと『Fate』は原作者・奈須きのこ氏が膨大な量の設定を作りこんでおり、『プリズマ☆イリヤ』もその設定を引き継いでいる。だからこそ短いエピソードだけでもギュッと凝縮された展開が楽しめるわけだが、原典のゲームを知らない読者にとって親切とはいいがたい。アニメ版でそのあたりをどうアレンジするか、制作者の手腕に期待したい。