『大きなかぶ』のおじいさんが教えてくれる、リーダーの在り方
(こどものとも絵本)
A.トルストイ(著)、佐藤 忠良(イラスト)、内田 莉莎子(翻訳)
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指示を受ける立場から、指示する側へとまわると、プロジェクトのリーダーを任されることも増えるだろう。けれど、どうやって後輩や部下を引っ張っていけばいいのか分からない……。そんなときに、リーダーの在り方を教えてくれるのが『大きなかぶ』に登場するおじいさんだ。おじいさんとおばあさん、孫、動物たちのみんなで力を合わせて、大きなかぶを引き抜くというプロジェクトを成功させた要因は、おじいさんの“演技力”にあった。
「おじいさんは最初から本気なんて出していないんです。腰を痛めない程度の力で試しにかぶを引っ張ってみて、誰かに手伝ってもらう必要があるとおじいさんは考えたはずです。そこでおじいさんはおばあさんを呼び、おばあさんは孫を、孫は動物たちを呼びます。そして、おばあさんや孫が助けを呼びに行っている間、おじいさんがくたびれた様子でかぶの前にしゃがみこんでいる“演技”こそが、プロジェクト成功のカギとなっているのです。その姿を見た、孫や動物たち=部下は“自分たちがなんとかしなきゃ!”とやる気を燃やし、その力を利用することで、おじいさんは小さな力でかぶを引き抜くことに成功しました」
先輩や上司が疲れたふりをして、しゃがみこんでいるだけで後輩や部下はやる気になる――『大きなかぶ』には、後輩・部下育成の極意が詰まっているのだ。
けれど、はじめて指示する側となった人には、後輩や部下に仕事を任せることができず、自分ひとりの力でかぶを抜こうとしてしまうこともあるはず。なにかコツはあるのだろうか?
「後輩や部下に仕事を任せられない人は、ずっと部下のままでいればいいのです。なにも悩む必要はありません。けれど、組織が求めているのは後輩や部下を育成できるリーダーです。彼らを育成するためには、あえて転ばせることも必要です。後輩や部下が失敗しないように、自分で仕事を抱え込むことは優しさではなく、育成を放棄しているだけ。彼らが失敗したときに、アドバイスやバックアップができるように体制を整えておくことが本当の優しさであり、本当のリーダーシップなのです」
後輩や部下が転んだときにちゃんと見守ってあげる。自分の実力を磨いて、そのための余裕をつくることが後輩や部下に仕事を任せるコツと言えそうだ。
後輩・部下を成長させたいなら『ジャックと豆の木』に学べ!
(いもとようこの世界の名作絵本) Amazonで購入
『ジャックと豆の木』の主人公であるジャックは、大切な牛と交換した豆粒から伸びた巨大なつるを登り、雲の上にある巨人の家から金の卵を産む鶏を持ち帰った。ジャックが大きな成功を掴むことができたのは、彼を自由奔放に遊ばせておいた母親の教育が大きいと千田さんは分析する。
「もしも、ガチガチな管理教育で育てられていたなら、ジャックは雲の上まで伸びる大きな豆の木に登るという、無謀な挑戦はしなかったでしょう。自由奔放に遊んで育ったからこそ、冒険に必要な勇気と知恵を獲得できたのです。ビジネスでも、勇気と知恵をいかに獲得できたかで、その後の成長は大きくかわります。後輩や部下の前にレールを敷きつめるのではなく、ある程度の自由を与えることも必要です」
もちろん、後輩・部下にただ自由を与えるのではなく、彼らの得意不得意を見極めて、活躍しやすいフィールドに誘導することも大切だ。けれど、中には自分の得意分野を勘違いしている後輩や部下もいるだろう。どうすれば彼らを上手に導くことができるのだろうか?
「得意分野を勘違いしている人は挫折も早いです。得意分野を勘違いしている人が10時間掛けてやる仕事を、本当に得意な人は1時間でこなしてしまいます。そうした現実を目の当たりにしたとき、自分から気付くものです。そして、自分が勘違いしていたことに気付いて落ち込んだとき、“君はこんなことに向いているのではないか”とそっと囁いてあげてください。受け入れ態勢が整っていない相手になにを言ってもムダです。でも、落ち込んでいるときは、アドバイスを受け入れやすくなっているものなのです」
こちら側の指示を押しつけるのではなく、相手の様子をよく観察して、的確なタイミングでアドバイスすることが、先輩や上司には求められるのだ。